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2008年6月25日発行
 
映画 CINEMA VIEW 半身反義(日本)
 
 

昭和を撮った男との対話
「センセー、『人類の進歩と調和』って…矛盾してません?」

 「半身反義」は東京オリンピックや大阪万博などの記録映画の監督・演出家として活躍した山岸達児さんにカメラを向けたドキュメンタリーとドラマからなる異色の作品だ。親子以上に年の離れた竹藤佳世監督は2003年に脳梗塞で倒れた山岸さんを高度経済成長の一端を担った男として肉声を聞き出す。二人の“共同作業”は昭和の光と陰を鮮やかに浮き上がらせる一方、体は不自由でも演出家精神は失わない老いた男の生き様をとらえている。

「ある意味、僕はいい人生を送った。でも映画人は現役のときは華やかでいいけど老後は…」
 

 映像は山岸さんが切り取ったオリンピックや万博の記録映像をはさみながら、山岸さんへのインタビュー、かつての仕事仲間からの聞き取りなどを通じて昭和という時代を振り返る。随所にイメージ映像やドラマを折り込むことで、山岸さんの心象風景をも描き出す。
 映画の中で「スタッフを生かすコツは」と竹藤監督が聞く。「誉め殺し。言われればもっといいものを作ろうと思うから」と先輩の山岸さんが答える。
 「センセー、『人類の進歩と調和』って……矛盾してません?」。大阪万博のテーマに触れながら監督は高度成長の陰で公害に苦しんだ昭和という時代に疑問を投げかける。
 「ある意味、僕はいい人生を送った。でも映画人は現役のときは華やかでいいけど老後は……」と山岸さんはわが身を振り返る。
 亡くなった彼の愛妻も映っている。「日本が一番忙しかった時代。苦労をかけた」
 砂丘で不自由な手をかかえ足を引きずる若い男のイメージ映像が映る。「砂漠に入った時、水が半分しか残ってないと思うか、まだ半分飲んだだけと思うか。同様にまだ手がある、足があるといい方に僕は考える」と山岸さん。
 彼を長編第一作に選んだ理由について、竹藤監督はこう説明する。「(70年前後に生まれた)私たちの世代は気がついてみれば自動販売機からテレビまで出来上がったものばかりに囲まれ、なぜそうなったのかはよく知らない。逆に歴史の授業でもっと昔のことは習っているのに……。同様に山岸さんの作品も見たことがなかった。高度成長を支えた人のことは本人に聞くのが一番。もう一つは今の世の中の閉塞状況と体の不自由な山岸さんの現状が似ていると思って」
 「半身反義」のタイトルは山岸さんの「半身不随」という意味に加え、高度成長一本やりの昭和への疑問と、体は不自由でも人はまだ何かできるはずという希望を込めての「半信半疑」という。

竹藤佳世監督
 


 共同作業とはいえ、昨年完成した作品を山岸さんが見たのは最近だ。映像の専門家としてのプライドやプライバシー、長時間の上映に耐えられるかという体調面への配慮などから見せるのが怖かったという。しかし高齢者福祉施設で入所仲間ら約30人と一緒の上映会ではスクリーンを食い入るように見つめ、「あ・り・が・と・う」と出ない声を振り絞って礼を言ったり、感極まって顔をしかめる場面もあった。
 竹藤監督が驚くのは、山岸さんが撮られる立場ながら可哀想な老人ではなかったことだ。「車椅子に乗る本物の山岸さんとドラマで山岸さんを演じる若者がすれ違うシーンでは、カメラを意識してサングラスをかけたいと言ってきました。そして二人が近づいた時にそのサングラスを自らはずすという演出をしたのです」
 高度成長の昭和を映した男と平成の女性映像作家によるコラボレーション。映像はカメラを持った方が強いと言われるが、老人と若者、見る者と見られる者の“共闘”は成り立ったようだ。
 「半身反義」は7月5日より池袋シネマ・ロサにてレイトショー。
「半身反義」公式ホームページ:http://www.hanshinhangi.com/
(アジア映画ウオッチャー・紀平重成)

 
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