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飢えていなかったからではない
食べようとしなかったのだ
眠れなかったのでもない
目覚めつづけているのだ
私は聞いている
ひとりの幼子の泣き声を
独房のなかに数ヶ月
それは心の不安の種だった
この瞬間の数時間
しかしそれは限りない心のときめきなのだ
そのとき知らせが届く
わが子誕生の知らせが
私は父親
自由を奪われ
私の世界は
暗く狭い土ろうのなかに押し込められている
わが子よ
たったいま
このまだ解放されぬ世界に生まれたわが子よ
華人が多数を占めるようになったシンガポールで、マレー系のジャーナリストとして詩人として活動していたサイド・ザハリ。1963年、国内治安法違反の容疑で逮捕され、裁判も行われぬまま投獄された。この詩は、17年に及ぶ投獄生活の中で書かれた幾つかの作品の中の一つ。今もマレー系の人々を中心に東南アジアの人々の胸を打つ詩として知られている。ちなみに、昨年4月、獄中のサイド・ザハリを描いた記録映画が上映されようとしたことがある。シンガポール政府は、「サイド氏がシンガポールの国家利益に反する活動に参加したことを正当化するもの」として上映を禁止した。
(詩は英文から訳出。文化部・仲田功) |