|
ライス長官 制裁解除を示唆
2つの疑惑と取り引きされるプルトニウム
北朝鮮に対する米国の制裁が解かれるのは時間の問題となっているようだ。ライス米国務長官は17日、「北朝鮮が核計画を申告した場合、検証には時間がかかる」として、検証過程であっても、制裁が解除される可能性を示唆した。「制裁」とはテロ支援国家の指定と敵国通商法の適用のことだ。18日、米国務省の関係筋は本紙の質問に、「議会の対応によるが」とことわりながら、「早ければ5月中頃までには何らかの声明が出るだろう。テロ支援国家の指定解除は昨年末から既定の事実となっている」と答えた。だとすれば、米国のこだわる「完全かつ正確な申告」が行われるということか。北朝鮮はウラン濃縮と核拡散疑惑(シリアへの核協力)を否定し続けてきた。北朝鮮はそれを認めるということか。
(政治部・朴在宇)
 |
|
|
北朝鮮が核計画を申告した場合、検証には時間がかかる」 |
|
| |
|
8日の米朝協議(シンガポール)では、北朝鮮が米国の懸念を「acknowledge」(認識)し、米国も北朝鮮の立場を了解するということを“覚書”(非公開文書)に盛り込むことで一致した。ようするに、6カ国協議議長国の中国に提出するプルトニウムの申告書とは別に、北朝鮮に配慮した米朝だけの了解文書を作成するということだ。
注目すべきは、その際の「acknowledge」という表現だ。1972年の「上海コミュニケ」が想起される。この時、米中は、台湾を放棄できない米国の事情と、「一つの中国」を主張する中国の立場を互いに認知するという「acknowledge」の表現を用いることで共同コミュニケにこぎつけた。
上海コミュニケ35周年特集を組んだ北京週報の記事は興味深い。「『上海コミュニケ』の独特なところは双方が3分の2以上のスペースをさいて各自の立場の相違点を列挙し、小さなスペースで集中的に共通点を記したものである」(08年4月18日)
列挙された多くの相違点を「小異」として棚上げしたということだ。ようするに、双方が認めがたいとすることには目をつぶったということだ。
米国は明らかにこの上海コミュニケを踏んで米朝協議に臨んだ。
北朝鮮が、ウラン濃縮問題や核拡散問題で検証に応じる可能性が極めて低いことを見越してのことだった。ヒル次官補は、プルトニウムに焦点をあて、「プルトニウムは疑惑ではなく厳然たる事実」として、プルトニウム問題を優先する考えを示した。
プルトニウム抽出量について北朝鮮は30キロと主張し、米国はおよそ50キロと推定している。おそらく北朝鮮は、米国が二つの疑惑に目をつぶるかわりに、プルトニウムについては米国の納得できる申告を行うつもりなのだろう。シンガポールの暫定合意とはそのようなものであったはずだ。
そうまでして合意を急ぐ事情は双方にある。
北朝鮮側で言えば、まず、韓国で親北政権が退き、登場した李明博政権が、核放棄を先決とする姿勢で一歩も譲らなくなった。その一方で、食糧難は深刻化する。FAO(国連食糧農業機関)は、今年10月までの北朝鮮の穀物不足は166万トンに達するだろうと指摘した。2月末には、ペリー元米国務長官が非公式に平壌を訪問、金正日政権に「“民主党政権”に期待しないほうがいい」と親身でリアルな忠告を行った。
北朝鮮側に、米国が差し伸べる手を振り払う余裕はあまりなかったと言える。
ブッシュ政権の事情はどうか。2年前、金融制裁を解除することで最も有効な対北カードを使ってしまった。任期は1年を切った。米議会は、旧フセイン政権とアルカイーダとの関係について「両者の関係はなかった」とする米軍関連の報告書を公表し、ブッシュ外交をさらに窮地に立たせた。
焦る理由はほかにもある。チベット問題で北京五輪への世界の風向きが悪くなる中、中国が米朝交渉の早期解決を望んで、北朝鮮の核保有を仕方なしとするような姿勢を見せたことだ。
ブッシュ政権の手許には、敵国通商法の適用解除をちらつかせるカード一枚しか残っていない。金正日政権が喉から手が出るほどほしい一枚だ。ブッシュ政権もこれを使うほかない。
テロ支援国家指定の解除は、その一枚が金正日政権の手にわたることを意味する。それが、米朝正常化への扉を大きく開くことになるということは、もちろん、ブッシュ大統領は承知の上のことなのだろう。核申告で問題が残るにせよ、中東政策で深手を負った今、せめて対北外交で“形”を示そうとしても不思議ではない。宿題は中国に任せればいいと、たぶん、ライス長官はブッシュ大統領に進言しているのだろう。
◇敵国通商法
「テロ支援国家指定」とともに北朝鮮が米国による「敵視政策の象徴」とみなし、解除を求めてきた。米国は第一次世界大戦中の1917年に制定し、同法に基づく北朝鮮への制裁を朝鮮戦争(50〜53年)時に発動した。外国為替取引、輸出入、資産移動などを調査、規制、禁止できる。
|