的中した監督の不安
「健全な状況で映画が上映されるかわからない」
映画「靖国 YASUKUNI」の李纓(リイン)監督は、3月14日に行われた統一日報のインタビューで不安をもらしていた。その不安は突然の上映中止という事態で現実のものとなった。
上映中止の契機となったのは、3月12日に行われた国会議員向けの試写会だったといえる。李監督も認めるところだ。
国会議員向けの試写会を要求したのは、自民党の稲田朋美議員が会長を務める「伝統と創造の会」だった。映画製作に文化庁関連団体からの助成金が支払われていた。稲田議員らの試写要求は、映画が「助成金支給の条件を満たしていないのではないか」ということにあった。
試写会後、上映を予定していた一部の劇場に右翼団体の街宣車が現れ、劇場側は相次いで上映を中止した。
稲田議員は3月31日、「私たちの行動が表現の自由に対する制限でないことを明らかにするためにも(映画の上映を)中止していただきたくない」と述べた。
一連の上映中止を見ると、グランドプリンスホテル新高輪が日教組への集会会場提供などを拒否した一件が思い出される。2月初旬に起きたこの騒動は、外部からの抗議活動や交通渋滞、騒音発生が予想されるので会場提供を断ったと、ホテル側は説明した。ホテル側は後日、旅館業法に違反したことを認めた。
映画の上映中止とグランドプリンスの一件の共通点は、劇場やホテルが自ら場所の提供を取りやめた点にある。外部からの抗議行動を受けるか、もしくはそれを予知して、自主規制を設ける事態は、言論・表現の自由を奪う端緒となりかねない。
上映中止のニュースは、思わぬ波紋を呼んでいる。5月上旬から順次上映を予定している映画館は、全国で21館(4日現在)に上っている。
李監督は、「映画を見た上で批判するのはかまわない。むしろ私はそうして議論が活発に行われることを望む」と語っている。
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