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2008年4月9日発行
 
裏窓ソウル事情 捜査で怠慢 市民に不誠実
 

大統領一喝でようやく動いた警察

 性犯罪者に対する警察当局の“怠慢捜査”に、大統領が激怒し、警察を叱咤した。珍しいことだ。
 李明博大統領は3月31日、京畿道高陽市の一山警察署を訪れた。事前の連絡もなく突如現れた大統領に、警察署内は騒然としたに違いない。

大統領の「ひと声」で犯人は6時間後につかまった

 事件がおきたのは3月26日の午後。ある男がマンションのエレベーター内で10歳の女児を包丁で脅し、拳と足で暴行を加えた。通りすがりの目撃者が男に向かって叫ばなかったら、女児はケガをするだけではすまなかっただろう。事件発生5日後に容疑者として身柄を確保されたLは、12年前に当時9歳の女児に性的暴行をはたらき逮捕されていた。
 女児に迫った危険。報道に国民は驚いたが、大統領の異例とも言える態度と、かしこまり身を引き締めた警察の変身ぶりにはもっと驚かされた。
 「早く犯人を捕まえなさい」
 大統領の一喝で、韓国警察は6日間見つけられずにいた容疑者を、再捜査の末たった6時間で確保した。
 容疑者確保後、警察の職務怠慢が次々と明らかになった。
 警察官が事件現場に到着したのは事件発生から15分経っていた。警察官はエレベーター内の防犯カメラに残った映像を確認し、翌日、単純な暴行事件として事件を処理した。犯人を特定する決定的物証になるビデオテープは持ち帰らなかった。
 ビデオテープに残された犯人の姿を印刷して情報提供を求めたのは両親だった。両親は何度も警察に捜査の進行状況を確認したが、返ってくるのは「待ってくれ」という言葉だけだった。耐えかねた両親はテレビ局にビデオテープのコピーを持ち込み、テープはニュースで放送された。
 大統領が一山警察署を訪れたのはニュースに接した翌日のことだった。
 韓国では近年、子供が被害者になる事件が続いていた。警察の不誠実な対応や怠慢がやり玉にあげられるのは珍しくなかった。
 今回の事件に関しても、一山警察署は「捜査に取り掛かるには、行政関連の書類を処理して、担当刑事を割り当てるだけで3日間はかかる」と弁明した。実際、警察が“単純な暴行事件”として捜査に着手したのは事件発生4日後のことだった。
 「将軍の咳払いで大佐は大尉をののしり、大尉は隊員を部下全員に気合いを入れる」
 官僚主義を批判する韓国のジョークだ。大将のくしゃみの責任を取らされるのは、いつも最下級の兵士だという意味で、今回の事件にもその一端がうかがえる。
 “李明博将軍”の咳払いに、捜査本部は急遽、事件を一山署所管から京畿地方警察庁所管に格上げした。容疑者の懸賞金まで500万ウォンから1000万ウォンに“格上げ”されたというから滑稽だ。容疑者確保の報を受け、捜査の責任をとって懲戒免職となったのは、一山警察署の刑事課長と地区隊長など、末端の警察官6人だけだった。
 「たった6時間で容疑者確保に至った」と、今回の一件で警察をほめる国民はいない。大統領の一喝がなければどうなっていたか、国民の警察への不信は深まっただけだ。

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