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2008年4月9日発行
 
東京測地系→世界測地系 EU地域政策の経験
 


日本、韓国、中国に高まる関心

 近年、日本、韓国、中国においてEU経済統合への関心が、政財界や学会での活発な東アジア共同体論議を背景にして高まっている。東アジアの域内貿易や域内投資の急速な進展による事実上の機能的統合が、共通の価値と制度的統合に基づくEUのような共同体につながるのではないかという期待も生まれている。現在の東アジアの域内貿易依存度は80年代半ばのEU水準に達している。東アジアは制度的統合を必要とする段階を迎えている。EU経済統合の経験は東アジアの経済協力と統合に大きな示唆を与えるだろう。


「地域のヨーロッパ」という視点

 EUにあって東アジアにないものは多数あるが、注目すべきはEUという国民国家を超える超国家的次元と並んで、国境を越えた地域政策と「地域のヨーロッパ」という視点が存在することである。国境を越えた地域政策を含むEUの地域政策は07年度から再分配的な政策から地域競争力の向上をめざしてイノベーションと技能教育に多く投資する供給サイドの政策へ転換し始めている。
 EUの地域政策は、EUの拡大と経済統合の深化にともなう格差の拡大を是正するための結束政策として発展してきた。EUの地域政策の骨格を定めた88年の構造改革では、ギリシャ、スペイン、ポルトガルの加盟による地域格差の拡大と域内市場統合の完成によって生じると想定される経済的社会的不均衡に対応するために、EUが構造基金の配分方法を通じて一国内部の地域格差の問題に介入する道が開かれるとともに、欧州委員会の主導で国境を越えた地域政策を実行できる予算項目インターレグ(越境地域間協力)が導入された。その結果、EUの地域政策は、コーディネーターとしての欧州委員会、加盟国中央政府、下位地域(地方政府、地方自治体)の三層による多層的統治によって実施されている。


国境を越えた地域が発展の拠点

 インターレグは90年に開始され、I期(90―93年)、II期(94―99年)、III期(00―06年)として実施され、現在はIV期(07―13年)に入っている。
 インターレグは、ミクロレベルの国境を挟む地域間協力(インターレグA、略称CBC)、海・山・大都市を接合要素とする13のサブリージョンを対象とする国家枠を超えた協力(インターレグB)、マクロリージョンを対象とする広域地域間協力(インターレグC)、という3つのプログラムから成る重層的な地域空間政策である。III期についてみれば、64のプログラムを実施したインターレグAでは、スウェーデン・デンマーク国境のエーレスンド地域における産官学ネットワークによる医薬複合産業クラスターの形成、インターレグBでは北欧諸国・バルト3国・ドイツ北部などを含むバルト海沿岸地域における産官学の連携による知識基盤型クラスター形成の試み、インターレグCでは各地域におけるイノベーションの経験を伝達しあい相互学習する事業が注目される。
 要するに、EUの国境を越えた地域政策は、国家単位ではなく国境を越えた諸地域が発展の拠点となる知識基盤型経済への移行を促進する制度的テコとなっている。
 EUの地域政策の経験は事実上の機能的統合を実現している東アジア地域において知識基盤型産業クラスターの形成によって諸地域の競争力を確保するには国境を越えた地域政策が必要であることを示唆している。(関西大学教授・若森章孝)

 EUの構造基金 EUの国境を越えた地域政策には欧州地域開発基金や欧州社会基金などの基金がある。これらの基金はEUにおける低開発地域の開発や長期失業者の就労促進などを目的に設置され、地域や地方が政策主体として参画できるシステムになっている。



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