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問われるジャーナリズム
欧米の報道は厳しく追求 なぜ中国政府気遣う?
「ラサ暴動」発生から約10日が過ぎ、欧州と日本、韓国メディアに「チベット報道」の姿勢の違いが際だってきている。ドイツやフランスのメディアが、流血事態の責任について中国政府を厳しく問いただしているのに比べ、韓国はほぼ無関心で、日本の主要日刊紙には、産経など一部を除いては中国政府への“気遣い”ばかりが目立っている。
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チベット僧らによる抗議行動は、世界各国に飛び火している。17日、チベット難民が多く住むインドでも抗議行動が行われた(写真=EPA・聯合) |
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たとえば19日付朝日の社説は、双方に対話を呼びかけ、「相手を疑っているだけでは対話は進みようがない」とし、「自治権をこれまで以上に拡大することなしには、チベット民族の不満を解消することはできまい」と括っている。フランスのル・モンドや、ドイツのシュピーゲルが「チベットの要求は独立」であり、「対話を武力で拒絶したのは誰か」という論説を掲げているのとは対照的だ。
そんな中で、日本で独り気を吐く産経は、コラム「正論」で、5月に予定されている日中首脳会談の延期を提言した。
日本のメディアでもっとも原則的な姿勢を見せたのは北海道新聞だったといえる。「チベット暴動 流血の拡大は許されぬ」(3月17日付社説)と、胡錦濤政権を強く批判した。
一方、日本政府からは、在チベット日本人の安否確認以外、何のコメントも出ていない。“お得意”の「遺憾に思う」の一言もない。福田首相や高村外相は、ヨーロッパを中心に広がりを見せている五輪ボイコットの可能性を、早々に否定している。 (政治部・朴在宇)
北京におもねる青瓦台 同調する北朝鮮
韓国政府や政府関係者は、ラサ暴動に対して公式的な立場やコメントを発表していない。中国政府への配慮からか、沈黙したままだ。中国政府の脱北者強制送還問題に対しても「静かな外交」に終始してきた韓国の対中国外交。今回のラサ暴動もやはり、“気遣い”を見せるほかないのか。 (ソウル・李民皓)
21日現在まで、外交部と国家情報院がブリーフィングという形でコメントを出した以外、韓国政府からのコメントは出ていない。ブリーフィングでは「在チベット韓国人の安全に異常はない」と報告しただけだった。
「わが国民の保護について、中国外務省や中国政府と緊密に連絡をとりあっている」(18日、外交部ブリーフィング)
「国民は4月末までチベット旅行を控えてください。現地にいる方は大規模デモの現場には近づかず、身の安全を確保してください。駐中大使館と領事館の電話番号を把握して、必要な時には助けを求めてください」(15日、国家情報院)
ラサ暴動に対する韓国政府の考えは、国家情報院のブリーフィングの行間に表れている。
国情院は「チベット武装暴動49周年」という表現を用いた。1959年当時、9万人のチベット人が死亡、ダライ・ラマら10万人がインドに亡命したという説明も行った。韓国政府にとっては、現在、ラサなどで起きている事態も、中国の主張する「暴動」でしかない。韓国政府は中国政府に共感しているかのような姿勢だ。
チベット事態に対する声明は、韓国2大政党からも出ていない。
ある情報筋は、韓国政府がノーコメントに徹しているのは「国際外交は弱肉強食の論理そのものだからだ」と話した。「国益を優先するためには、時には沈黙が一番有効な手段になる」
韓国の市民団体もチベット問題に強い関心を持っているようすはない。18日、在韓中国大使官前で、36の市民団体が中国政府を糾弾する集会を開いたが、その後これといった抗議行動はない。
マスコミもまた、もっぱら欧米メディアを引用するに止まっている。18日の抗議集会を報じた韓国メディアは皆無だった。
さすがに、韓国キリスト教長老会は19日、声明を発表した。中国政府に対し、チベットの独立(自治)を要求する市民への武力鎮圧を直ちに中断することと、チベット人の民族自決権を尊重するよう促した。
民主労働党を離党した議員らからなる進歩新党は18日、「チベット人に対する武力鎮圧を見た大多数の韓国人は、1919年の3・1運動で日本の帝国主義者が韓国人に対して行った暴力を思い出す。中国政府がチベット人に対する武力鎮圧を中断しなければ、中国に対する善良な世界市民の憂慮はさらに深まるだろうし、北京五輪にも少なからぬ影響を及ぼすだろう」と警告した。
一方、北朝鮮は中国政府を支持する立場にまわった。
朝鮮中央放送は19日、中国外務省のスポークスマンの言葉を引用し、「最近チベット自治区のラサで発生した殴打・放火など厳重な暴力犯罪事件は、ダライ集団が組織的に計画したことであり、内外のチベット独立・分裂勢力が互いに結託して行ったものだ」と報じた。
朝鮮中央放送はさらに、チベット僧らの抗議行動を「違法分子による暴力犯罪」と非難。「残忍な手法で罪のない人々を虐殺し、チベット自治区の各民族や人民の大きな怒りと厳しい糾弾を招いた」と伝えた。
主要メディアの反応 「民主主義中国は虚像」
チベット自治区ラサと、四川省アバ・チベット族チャン族自治州で起きている大規模な「暴動」について各国の主要メディアは次のように伝えている(一部抜粋)。
【ドイツ=デア・シュピーゲル】
ラサ市内を走る戦車は「世界の屋根」で車を焼き、数千もの兵士がアサルトライフルを持って(市民に)平穏を押し付けている。オリンピックに向けて人権を擁護するとした中国の約束は、窓の外に投げ捨てられた。クリーンで政治臭のないゲームの栄光に浴することを願っていた北京オリンピック実行委員会と中国の政治家にとって、最悪の悪夢が起ころうとしている。世界との交易が深まり、“民主主義中国”は発達したというのは、単に西欧の夢想家たちが描いた虚像だ。
【イギリス=ガーディアン】
アヘン戦争以来、中国は自分たちの言う「恥辱の世紀」を経験した。北京オリンピックは彼らにとって世界の舞台での発言権をより強める契機になるはずだった。多民族で彩られる国際社会での存在が大きくなればなるほど中国に向けられる否定的な視線は大きくなるに違いない。
【アメリカ=ニューヨーク・タイムズ】
困難な問題解決のために米国が必死になって助けを求めている国(中国)に、(米国は)政治的見返りを与えたようだ。
【アメリカ=ワシントン・ポスト】
ダライ・ラマが“文化的虐殺”と呼んだ事態がチベットで続いているなか、IOCのジャケ・ロゲ会長は、北京政府が行った一連の鎮圧行動に対し、反対の立場を表明するのを拒んでいる。これは完全に「オリンピック精神」に矛盾する。人権状況の改善は、北京オリンピック開催と等価の交換条件だった。ラサの路上に血が流れている状況で、どうして何もなかったかのようにオリンピックを開催することができようか。オリンピックによって中国の“真の顔”が白日の下にさらされるだろう。 |