| 露呈した「理念軽視」新政権
李明博大統領の言う「実用主義」に、保守派は疑念を抱いている。新政権が「太陽政策」路線を否定せず、継承するのではないかというのだ。「実用」という名の下で、親北派との闘いではなく妥協を選択したのだと保守派は指摘する。
疑念が生まれたきっかけは、新閣僚人事だ。
新政府の安保担当官は、すべからく旧政権の役人によって引き継がれた。李大統領は、前政権で合同参謀議長だった李相憙氏を国防部長官に、駐日大使を務めた柳明桓氏を外交通商部長官に任命した。新任統一部長官は、内定していた保守派の南柱洪氏ではなく、金夏中・前駐中韓国大使に決定した。国家情報院長の座には、昨年まで法務部長官だった金成浩氏が座った。
李大統領とその側近たちは「実用」という名の下で「理念を超えよう」と言ってはばからない。
李大統領は演説のたびに「理念の時代は過ぎ去った」「理念論争は古い」「理念を超えて“実用”に進まなければならない」などと繰り返し言っている。大統領秘書室の柳佑益室長も「(親北朝鮮政権だった)過去10年は、『失われた歳月』ではなかった」と主張している。李大統領の側近からは、前政権の対北和解・協力基調を維持しようという発言も出ている。
柳明桓・外交通商部長官は2月27日、国会の統一外交通商委員会人事聴聞会で「北朝鮮に対する和解・協力政策の基調は変えられないと思っている。李明博政府はこの基調を守っていくと思う」と答えた。
新政府が「理念を超えた実用」を強調するのは、4月の総選挙をにらんだ上での戦略だという見方もある。総選挙でハンナラ党が過半数の議席を得るためには、親北的な考えを持つ有権者の票も必要で、それを踏まえた判断だというのだ。
一方で、少なからぬ保守派は、ハンナラ党と李大統領の言動を「慢性的な理念軽視」によるものと見ている。
「理念軽視」を問題視する傾向は、韓国では特に強い。現実に横たわる問題がその傾向を強めている。
同じ民族なのに理念が異なるために分断している国家、朝鮮戦争の経験と核の脅威。北朝鮮は金日成主義が、韓国は自由民主主義という理念が支配する現実の下、「理念軽視」や「理念不足」は相手に付け込む隙を与えかねない。
朝鮮半島において、理念は体制の生存と直結しているといっていい。
「理念の時代は過ぎ去った」という李大統領は、朝鮮半島に分断をもたらした理念対立という現実を無視するロマンチストなのか? でなければ単なる観念論者でしかない。
朝鮮半島において「理念論争」を否定することは、自由民主主義と金日成主義をともに否定するものだ。「理念の時代は過ぎ去った」というのは、どちらが誤った考えなのかを判断しようとせず、両者を同断するに等しい。「金日成主義の時代は終わった」と言えばいいのに敢えて両者を否定するのは、金正日と韓国の親北派の機嫌を取るためではないのかと見られもしている。
新政権は少なくとも今の段階では、金正日との正面対決を避け、経済協力と南北対話による北朝鮮の核問題解決に期待する姿勢を隠していない。自由民主主義統一という現実的ビジョンではなく、金正日政権と共存共栄するという愚にもつかない座標を設定したといえる。非常に非実用的行動だ。
今後も親北派は新政権の足を引っ張り、構造改革に反対する官僚の反発は激しさを増すだろう。これに屈したとき、新政府は「太陽政策」を継承し、自己矛盾に陥ることになる。
保守派と李明博政権の密月関係は崩れ、対立関係に変わるだろう。親北派と保守派の両方から責められる可能性も否定できない。
保守派の圧倒的支持を得て当選した李明博は保守路線を固守したレーガンのようになるのか、それとも保守派を裏切り親北政権誕生のきっかけを与えた金泳三のようになるのか。
(本紙スタッフライター金成c)
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