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2008年3月12日発行
 
東京測地系→世界測地系 年金資産の運用損
 

サブプライム問題の陰で

 消えた年金記録問題や年金保険料の不正免除などの多くの不正に端を発する年金不信は、最高の水準に達している。さらに、サブプライム問題などによる厚生年金と国民年金の運用損は、昨年7月からの半年間で、約3兆1600億円となったことが報じられている。
 従来の年金資産運用における「5・3・3・2規制」は、安全性の高い資産5割以上、株式3割以下、外貨建て資産3割以下、不動産等2割以下の規制であったが、1997年12月に撤廃された。


早大では3年で60億が目減り

 早稲田大学年金基金では、この規制が撤廃されたことを理由の一つに、資産額の約7割を国内株・外国株に投資していた。しかし、2000年から約3年間で、主に資産運用の失敗によって、約200億円の年金資産が140億円へと約60億円が目減りしていた(以下の内容は、「早稲田大学の年金を知る会」のHP参照)。
 早稲田大学年金基金が主に株式に資金運用をしていた理由は、高収益によって、設立当初からの積立不足を解消するためであった。このハイリターンを狙う資産運用はハイリスクでもあるので、その成功確率は低く、老後のために安定的に支給されるべき年金資産の運用方法としては、一般には採択されない。
 危険な資産運用には、企業年金制度の構造的な問題が内在する。
 適格退職年金・確定給付企業年金などの確定給付型年金の場合、予定利率の収益を仮定して、一定額の年金額の支払いのための財政計画が立てられる。実際の運用収益が予定利率に満たない場合は企業が補てんすることを原則とするが、それを超える収益は、企業に帰属する仕組みであるため、企業が高収益を狙う場合が出てくるという制度の宿命的な問題がある。さらに近年、早稲田大学年金でみるように、投機的な運用によって資産運用に失敗した場合、年金財政の悪化を理由に減額を行う事例が現れている。


深刻な年金数理人の不正関与

 「早稲田大学の年金を知る会」は、年金数理人が二重帳簿とシミュレーションによる積立不足の水増しによる大幅な年金額の減額などの不正に関与したとして、日本年金数理人会に同年金数理人の除名申し立てを行ったが、事実上門前払いされていたことを公益通報としてHPに公開している。厚生労働大臣が認定する年金数理人は、信託銀行などの社員でもあるため中立性がないという問題があるが、巨額の手数料収入を目的に熾烈な年金基金の受け入れ競争を繰り広げており、減額の基礎となる年金財政の決算書とシミュレーションをも作成している。ここに企業の意向が入り込む余地がある。
 さらに同会は、年金数理人が関与した不正が、既存の複数あった受託銀行を某信託銀行一行に独占させ、受託銀行間の相互チェックがなされないようにした後に、行われたことを明らかにしている。
 企業側が危険な投資を行い、それが成功すれば企業の債務である積立不足を解消し、失敗した場合は、年金数理不正を使った年金財政の悪化を理由とした減額を行うことは、モラルリスクの最たるものである。年金制度に対する信頼性を高め、企業年金を老後保障の手段として定着させるためにも、健全な資産運用を通じた金融市場の発展のためにも、制度改革が急がれる。
(早稲田大学教授 李洪茂)

 公的年金の運用損 国民年金、厚生年金の積立金を市場運用している年金積立金管理運用独立行政法人は、10〜12月期の運用実績が1兆5348億円の損失を計上したと発表(4日)。米国のサブプライム住宅ローン問題の影響が広がり、内外株価が下落したのが主因。7月から半年間の運用損は3兆円を超えた。



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