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2008年3月19日発行
 
映画 CINEMA VIEW 東アジアの王朝を舞台に愛憎劇
 
 

テーマは共通だが まったく異なる印象
恋の罠(韓国)
王妃の紋章(中国)

 4月に相次いで公開される韓国映画「恋の罠」と中国映画「王妃の紋章」は東アジアの王朝を舞台に繰り広げられる華麗なる愛憎劇という点では共通しながら、見た印象はまったく異なる。これは中韓の映画スタイルの違いというより、現時点での監督のこだわりの違いというべきだろう。

臆病者のユンソだったが、王妃と恋に落ち、その情事を題材に官能小説を・・・
 

 「恋の罠」はペ・ヨンジュン主演の「スキャンダル」の脚本を書いたキム・デウの初監督作品だ。
 名文家を自認する官吏のユンソ(ハン・ソッキュ)は、まじめだが政争に巻き込まれた一族の苦難にも動かず、「わが身可愛さに震えている臆病者」とやゆされていた。そんなある日、彼は唐の名画複製事件の調査のため一族の宿敵、グァンホン(イ・ボムス)と食器店に踏み込む。そこで初めてみだらな小説を見た彼は、仕事中もその文章が頭の先にちらつくほどで、とうとう自分で書き始める。
 温厚だった彼はやがて「欲しいものを手に入れるためには手段を選ばない」という情熱を秘めた王妃との身分違いの恋に陥り、大胆にもその情事を題材にして官能小説の匿名人気作家にのし上がっていく。
 絵のセンスを買って、あえてライバルのグァンホンを挿絵画家に招き、小説の版元、筆写職人らで構成する創作チームは、好奇心旺盛な子どものように目を輝かせて性の奥義を妄想、研究し始めるのだ。
 原題は「淫乱書生」。刺激的なイメージを思い浮かべがちだが、チョン・ドヨン主演の「ハッピーエンド」や現在公開中の「ラスト、コーション」に比べると裸はないに等しく、“裸体アレルギー”の人には好感を持たれそうだ。それでは物足りないという方もエロスは十分に味わえるのではないか。というのも映画のために制作された内部が透けて見える黒い韓服が艶やかで想像力をこの上なく刺激するからである。監督はあえてストレートには裸を見せずに官能世界を描こうとしたのかもしれない。
 さて危険な愛には幸福の代償としてお仕置きが待っている。禁断の愛は小説を通じて多くの人のうわさに上り、やがて当の王妃や王の知るところとなる。2人の前に連れ出されたユンソは拷問に耐えて……。監督は性をテーマにしながらも実は勇気と純愛を描きたかったのだろう。
 一方、「王妃の紋章」は数々の国際的な賞を受賞しているチャン・イーモウ監督が「HERO」「LOVERS」に続く歴史アクション大作として制作した。舞台は唐代の末期。王(チョウ・ユンファ)、王妃(コン・リー)、長男(リウ・イェ)、2男(ジェイ・チョウ)の豪華キャストに加え、黄金やアートガラスで覆い尽くされた宮殿などのセット、重さ40キロもある王と王妃の黄金の衣装などは見るだけでもため息が出る。
 中でもフランスの宮廷ファッションを連想させる王妃や女官の胸をことのほか強調する衣装は、肌を露出することを嫌う中国文化の伝統からは大きくそれて驚かされる。赤にこだわった「赤いコーリャン」以来のビジュアル志向と最近の豪華主義をミックスさせた、監督が求めるエンターテインメント作品の一つの頂点ともいうべき作品だろう。
 9月9日の重陽節を前に王家の人々がそろう。しかし王は王妃にトリカブト入りの薬を飲ませ、それを承知で王妃は薬を飲み続ける。その王妃は継子の皇太子と不義の関係を続けていた。華やかさの陰で3男を加えた王家の5人はそれぞれ人には言えない秘密を抱えていた。となると何やら山崎豊子原作の「華麗なる一族」をほうふつとさせる。しきたりにしばられた封建的な家族の物語。しかし怨念と策謀が渦巻く王家の場合は国を揺るがす大惨劇に。華麗なる表面とは裏腹に内側は腐り果てていたのである。
 アクション担当のチン・シウトン監督の手による活劇は見ごたえ十分である。中国では空前の大ヒットとなったのもうなずける。しかし観客は、次はもっと刺激的にと要望をエスカレートさせていく。この路線はいずれ飽きられる。チェン・カイコーと並ぶ巨匠は次にどう出るのだろうか。

 「恋の罠」は4月5日よりシネマート六本木、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国ロードショー。
 「王妃の紋章」は4月12日より東劇ほか全国にてロードショー。
(アジア映画ウオッチャー・紀平重成)

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