| ゴムボート2艘 6家族13人がなぜ・・・
韓国に亡命しようとしたとされる22人の北朝鮮住民が、その日のうちに北に送還された事件は、謎に包まれている。韓国政府関係者は「当人たちが送還を望んだ」と言い、日本と韓国のマスコミの一部は、「もともと亡命の意思はなかった」という内容で報じている。果たしてどうか。(東京・崔世一、ソウル・李民皓)
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| 22人送還の真相究明を訴える「北朝鮮民主化委員会」の人びと |
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情報部説明に曖昧な点多く
2月8日午前五時10分、2艘のゴムボートに乗った22人の北朝鮮住民が、朝鮮半島西海上で韓国海軍に救助された。
韓国国家情報院は、「救助された人々は黄海南道・康?郡沖の島にかき採取に出かけた際、潮に流されて韓国の領海に入っただけだ」と、調査結果を発表した。
国情院のこの説明をまともに受け取る人は、ソウルではまずいない。22人もの人々を、その日のうちに送還したことへの説明とするには、腑に落ちない点が多すぎるからだ。
韓国政府は救助から約13時間後の8日午後6時30分頃、22人を板門店から北に引き渡したことを明らかにした。遭難した北朝鮮船舶への処理手続きによる措置であり、マニュアルどおり対応したという説明だ。
だが、38度線を越えた22人が本当に漂流した漁民だったのか、どうか、政府発表だけでは判然としない。
脱北者と北朝鮮人権関連団体らは「彼らは脱北住民だった」と主張している。旧正月の朝にかき採取に出かけた点、15〜17歳の青少年3人など、6家族13人が含まれていた点、送還までの時間が短時間だったという点などがあまりに不自然だというのだ。
脱北者救援の運動を進める団体らは今回の件に対して「常識と倫理に適合しない仕打ち」だと非難し、その証拠にと、元北朝鮮空軍大尉のパク・ミョンホ氏の経験を挙げた。
「パク・ミョンホ氏も脱北後の取り調べで、『亡命』という言葉を口にできないほど、国情院の係員たちから高圧的な態度で迫られた」
国情院は、22人が北朝鮮政府の許可を受けないで出航したこと、海軍に救助された後、食事を拒否してまでも送還を強く求めたことなどを挙げて反論している。関係機関との合同調査で個別面談をした結果、脱北の意思を表明した者が一人もいなかったことも明らかにした。だが、なぜ短時間で送還を決定したかについての具体的な説明は皆無だった。
「北朝鮮民主化委員会」のホン・スンギョン氏(元北朝鮮外交官)は、国家情報院の対応は国家機関の職務放棄だと指摘する。
「北朝鮮では、家族どころか親戚が揃って船に乗ることも禁止されている。今回、複数の家族が共に船に乗っていたことは、亡命の意図があったとみるべきだ」
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ホン氏は、国家情報院の発表内容に強い不信感を抱いている。
北朝鮮は8日、22人が韓国海軍に救助された3時間後の午前8時20分頃、国際商船通信網(艦船間のホットライン)を通じて「遭難した2艘の送還」を韓国側に要請した。韓国側はこれに応える形で22人を帰したが、送還を即時に公表しなかった。
脱北者を支援する「北朝鮮人権団体連合会」は、「韓国政府はこれまで、2004年10月14日に東海(日本海)上で3人、2005年1月23日に東海上で2人、2005年12月20日に東海上で6人、2007年には西海上で2人の北朝鮮漂流民を発見し、送還時にマスコミに公開した。今回は大規模な越南だったにもかかわらず隠蔽した」と指摘した。
脱北者らによると、送還された22人は全員銃殺されたといわれ、うわさは北朝鮮の黄海道一帯で広まっているという。
救助直後に北朝鮮政府から送還要請が入ったこと、救助から送還までの手続きが早すぎたことから、22人が本当に漂流していたのかという疑いは強まるばかりだ。
海上での救助から仁川に連行しての合同調査、板門店経由での送還。かかった時間は13時間だった。移動時間などを計算すると取り調べ時間は四〜五時間に過ぎなかったと推定される。
脱北者問題を担当したことのある韓国情報部関係者によれば、通常、脱北者の取り調べは、少なくとも2〜3週間を要する。国家情報院と、軍情報部がいわゆる「クロスチェック」をしなければならない。現職のある情報関係者でさえ、「韓国当局は端から脱北問題として扱いたくなかったのではないか」と、婉曲的ながら、韓国当局の対応に疑問を覚えている。
「一般住民がゴムボートを使用するケースは聞いたことがない。それだけでも、亡命の意志があったとみることができる」
韓国内の脱北者数は1万3000人を突破した。今も年間2000〜3000人が韓国行きの列に並んでいる状態だといわれる。
中朝国境の取り締まりが強化され、朝鮮半島の西海上経由の脱北は増えている。
北朝鮮の反応
22人は銃殺された可能性があると指摘した韓国メディアの報道に対し、北朝鮮は「韓国保守勢力の謀略だ」と反発している。
北朝鮮の祖国平和統一委員会は21日、朝鮮中央通信を通じて「22人は、裕福な生活ができると亡命を勧めた韓国側の誘惑を拒否し、共和国に戻った。現在はそれぞれの自宅に帰り正常な生活を送っている」とし、「友好的であった南北関係を壊そうとする罠がしかけられた」と、強い調子で批判している。
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