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2008年2月20日発行版
 
Washington View  隠しきれない米国の姿 ヒラリーの危機
米アジア平和安保会議議長 金暎勲
 

マイノリティーの戦場となった米大統領選

 「長い夏の夜のマラソンだ」
 ヒラリー・クリントンとバラク・オバマのたたかいを米国市民はこう表現している。
 共和党はどうか。表面的にはジョン・マケインの独壇場に見える。有力候補だったミット・ロムニーがレースから退場し、マケイン支持に回った。だが、マケインはジョージア、ルイジアナ州などの予備選でマイク・ハッカビーの思わぬ“タックル”を受け、僅差の敗北を喫した。共和党は本選にマケインを送ることになるだろうが、人々は「満身創痍の勝利」と言っている。

   

 予備選は6月3日に予定されているニューメキシコ州(共和)、モンタナ州(民主)、サウスダコタ州(民主・共和)での戦いが終わるまで、民主党ではヒラリーとオバマのデッドヒートが続くだろう。クリントンとオバマは予備選の2大スターとなった。
 それにしても、2008年の米大統領選は、かつてないほどの盛り上がりを見せている。その特徴を見ておく必要がある。
 選挙は4つの段階に区分してみることができる。前哨戦(Pre‐PrimaryRace)、最初の予備選、スーパーチューズデー、春・夏の予備選だ。
 伝統的にはスーパーチューズデー(2月5日)の結果で各候補の大勢がほぼ決まってしまうものだが、民主党が番狂わせを演出した。これが今回の選挙戦の最も大きな特徴であり、1928年以来、政府現職の大物が出馬していないことが、先を読めなくさせている。副大統領のチェイニーは出馬しない。言い換えれば、政府ポストからアドバンテージを得る候補が存在していないということだ。
 次に、これは特筆すべきことで、男性対女性の大統領選になる可能性がある。ヒラリー・クリントンが全国党大会で大統領候補指名を受けた場合、おそらく共和党のマケイン候補とあいまみえることになる。男性対女性の戦いという、米大統領選史上初の事態が出来することを有権者は密かな楽しみにしている。
 もう一つ、これも米国史を変えるかもしれない重大な要素だ。誤解をおそれずに言えば、「RaceintheRace」(人種選挙戦)となる可能性がある。白人の母と黒人の父を持つオバマとヒラリーのたたかいがヒートアップする背景に、有権者の人種間の競争意識が働いているというのは、古びたリベラリスト以外は誰もが思っていることだ。
 米国社会では「Racial Discrimination」(人種差別)という言葉が使われなくなって久しい。「寛容に努力する米国社会」なのだとリベラル派は言う。だが、人種差別意識が働く土壌が消えたわけではなく、オバマが当選する可能性が大きくなればなるほど、“人種選挙戦”競争が激しくなると多くの人は思っている。人々は密かに“白黒競争”と言っている。人種意識をくすぐられている人は少なくない。隠しきれない米国の姿だ。
 だが、このことが、却ってオバマ有利に働くかもしれない。黒人は不遇の長い歳月を送ってきたのだと、オバマ陣営に駆けつけた有力者は言い、ことさら「黒人問題」が提起されるようになった。今回の選挙ではむしろ白人に不利になるかもしれないという雰囲気を、反オバマ陣営が感じつつあるのは事実だ。
 
 今回の選挙の特徴がどこにあるかを考えれば、さらに、民主・共和両党とも、大統領候補が全員連邦議会の現役上院議員であるということに気づくはずだ。
 現役議員として国政をめぐる論戦の最前線に立ってきた人たちが、そのまま異なる政見と政策を持って戦っている。
 もう一つ、選挙対策費がこれまでになく多く使われているという点にも気づかされる。連邦選挙管理委員会委員長マイケル・トーナーは、選挙経費は12億ドル相当必要だと述べた。2000年の選挙では約6億5000万ドル、2004年は10億ドルだったことと比べれば、今回の選挙対策費がどれほど多いか分かる。
 
 今回の選挙で特に指摘しておかねばならないことがある。中南米系や黄色人種らの“移民票”を奪い合う様相を呈していることだ。選挙を抜きにしても、移民問題は今日米国が抱える最大の国内課題だ。米国は移民たちのための「合衆国」でもあり続けた。出身国別(地域)に形成されている移民たちのコミュニティーは、相当な社会的影響力を持つようになった。民主党のオバマ候補が黒人から大きな支持を得ているのに対し、ヒラリー候補はラティーノ(中南米系移民)からの人気が高い。実際、彼女はラティーノを多く抱え、全米最多の代議員数を持つカリフォルニア州で大勝した。アジア系からの支持を集めている議員たちの動向も無視できない力になっている。イタリア、ポーランド、特にユダヤ系などのヨーロッパ系移民も、選挙キャンペーンの最重要事項に挙げられている。
 スーパーチューズデーで勝利を確実にできなかった民主党のオバマとヒラリーは九日、ワシントン州(代議員九七人)、ネブラスカ州(同31人)、ルイジアナ州(同68人)で予備選を行った。それぞれの州で68%、68%、57%と、オバマの圧勝だった。彼は続くメイン州でも勝った。
 この時点で獲得した代議員数の累計は、ヒラリー1125人、オバマ1087人で、一時、広がった2人の差は一気に縮まり、12日に行われたメリーランド州、バージニア州、ワシントンDCでの予備選に勝利したオバマがついに逆転した。だが、予断を許さない状況が続いているのは変わらない。
 3月4日、代議員数の多いテキサス州(228人)、オハイオ州(161人)や、ロードアイランド州、バーモント州で一斉に予備選が行われる。4州の444人の代議員を一人でも多く獲得するため、2人はそれこそ“死にものぐるい”だ。先頭ランナーとして失速した感のあるヒラリー陣営は、選挙対策本部長のパティ・ソリス・ドイルを更迭するなど慌しい。
 
 民主党は誰が本選に出るにしろ、国政のリーダーシップを発揮できるのかと、疑われている。「イラク危機」「サブプライム問題」などの「経済危機」。民主党は「危機を解消する」と言う。
 共和党は、危機は解消するものではなく、「克服」するものだと言っている。本選はムードでは争えない。共和党は手ぐすねひいて待っている。「満身創痍の勝利者」と言われるマケインは、その頃にはもう傷を癒しているはずだ。まったく先の読めない、空前絶後の大統領選であることは確かだ。共和党は「できればオバマに出てきて欲しいものだ」と考えているようだが、この読みもはずれるかもしれない。

「共和党はオバマを待っている」
 スーパーチューズデーが過ぎて、共和党はマケイン候補の指名獲得がほぼ固まったが、民主党はクリントン候補とオバマ候補の一騎打ちが続いている。実際の大統領選の流れを、下院議員を3期つとめた金昌準氏に聞いた。
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