| 消える3無政権
2008年の朝は、韓国民にとって格別なものとなったはずだ。金大中政権以来続いた親北政権が、青瓦台から出ていく年なのだ。私は大韓民国が正常に戻ることがあるのだろうかと、ときおり不安に駆られたものだ。かくも親北10年は長かった。李明博新政権の誕生は、政治が闇に閉ざされたこの10年を考えると、歴史的事件と言える。新政府は「747選挙公約」(年間7%の経済成長、1人当たりの国民所得4万ドル、7大経済大国入り)を掲げた。これを実践するための一歩を2月25日に踏み出す。同時に、3無(無能、無責任、無計画)政権の盧武鉉政府は消える。李明博新政権は、「3無政権」が荒廃させた韓国政治の残骸―親北政治を取り除くことを仕事始めとすることになる。
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盧政権が進めた経済特区「開城工団」。李次期大統領も支援の対象にしている |
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荒廃した青瓦台に入る李明博
李明博次期大統領は新政府を「実用政府」と名づけた。かけ声倒れの政治スローガンはやめて、行動で政策の実践を示していくという国民の声に応えようとする意思の表れだ。
新年早々、反ハンナラ党勢力が提起した「BBK疑惑などに対する特別検察法」が盧武鉉政府によって公布される可能性が大きい。李次期大統領の不正株価操作疑惑について、親北派のネガティブキャンペーンは再び開始されるだろう。だが、新大統領は慌てる必要はない。大統領の真の主人である国民が、リーダーシップを発揮せよと叱咤激励しているのだから。検察が「嫌疑なし」と判断した事件だ。政権の誕生が阻止されたりすることは、まずあるまい。
国政刷新は、2月の就任と同時に終わることはない。李明博新政府が引き継ぐ国政は、相当な時間を要さなければ片付かないほどの難題が山積みとなっている。
親北側近人事などで荒廃した青瓦台の綱紀粛正が最初の仕事となろう。政府の市場介入を最低限にとどめる「小さな政府」実現に不要な部署と委員会の整備も急がれる。公社と教育の改革。世代間・地域間・階層間に生じた亀裂の修復と、青年失業率の改善。重税とグローバル化の波にのまれ、転落した30%の中産階級への手当て。挙げればきりがない。
対外関係では、「反米自主」を主張する386世代の台頭で弱まった韓米同盟関係の修復と無原則に行われてきた対北支援の見直しに追われるだろう。南北関係のイニシアチブを取り戻すことができるのかが、対北政策での重要ポイントとなる。
国家の礎「安保」と外交政策の再調整を
李明博新政府と金大中・盧武鉉政府。両者の間に歴然とした開きがあったのは安保問題だ。
李明博次期大統領は、対北政策の優先順位に安保を据えることを明らかにした。この10年、安保体制はなおざりにされてきた。結果、解放以来、築かれてきた米国との関係は、同盟とは名ばかりのものになった。
「韓米同盟は南北共助より優先しなければならない。政治的合意で休戦協定の法的効力を取り消すことは正しくない。北の核廃棄が実質的に進む過程で平和協定も議論しなければならない。停戦協定体制を新しい平和協定体制にする時期は、朝鮮半島の完全な非核化が達成されてからでなければならない」と李次期大統領は強調し、「NLL(朝鮮半島西海上の限界線)は現在の休戦協定が続く限りは尊重されるべき。NLLを無力化しようとする試みは、いかなる場合もきっぱりと阻止しなければならない」とも述べた。
これは、盧武鉉政府の「北朝鮮の核問題を協議する過程で平和体制構築の議論を始めなければならない」という主張とは真っ向から対立するものだ。盧武鉉政権が推進してきた「2012年戦時作戦統制権(戦作権)の移譲」と「2020年までの全韓国軍の戦力開発構想」の見直しが迫られるだろう。李次期大統領は、「北朝鮮の核武装で韓国の安保が危機に瀕した状況で提示した盧武鉉政権の判断は妥当ではない」と指摘している。
韓国軍の戦力を自国の技術でまかなうことに関しては「2020年までの構想も、新しい戦略環境を反映しながら見直さなければならない」と指摘した。
李明博新政府の安保・外交政策は「北核廃棄優先」、「韓米同盟に基づいた安保体制の完備」という基調の下で進むだろう。
対日関係についてはどうか。
「極東の小さな国が、世界経済第2位の経済大国になったということは、アジア国家として誇らしいという以外にない」
李次期大統領の対日観をうかがわせる言葉だ。
これも当たり前と言えば当たり前だ。ロシアが、中国が、インドが国家体制の強化に向かい、韓国一国は政治的にも、経済的にもサンドイッチ状態にすでに置かれている。日本も同様だろう。韓日同盟の絆を強めることなくして、今世紀のサバイバルを生き抜くことは不可能だ。
小泉総理の靖国参拝、教科書問題、独島領有問題、これらは、盧武鉉政権の体制維持のため政治的に利用された。李明博氏が、当選後の記者会見で「未来志向の協力関係を強化する」と発言したのは、金大中、盧武鉉政権が採った対日政策の全面見直しを意味している。
韓米日3国は、北朝鮮の核問題解決のため、戦略的な協力関係を強化しなければならないが、懸案の「3カ国対北政策調整監督グループ会議」(TCOG)の定例化は、親北政権の退場と、李明博政権の登場で実現しそうだ。
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カン・インドク
平壌出身。朝鮮戦争勃発で韓国へ避難。1961年から78年まで韓国中央情報部の北朝鮮担当局長。98年3月〜99年5月まで統一部長官、99年7月から日本聖学院大学総合研究所客員教授 |
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「非核・開放・3000構想」が示す対北政策
李明博氏の出馬表明から1年間、金正日政権が浴びせた非難と脅迫は実に聞くに堪えないものだった。
だが、支持率は落ちなかった。「ハンナラ党の李明博が政権を取れば戦争が起こる」などといっていた北朝鮮は、11月中旬には脅迫や煽動を諦めたのか、傍観する態度をとった。
李明博政権の発足で、盧武鉉政権が推進した「一方的な対北支援」は根本的な修正を迫られるだろう。
新政府の対北政策の基調は、選挙公約に掲げた「非核・開放・3000構想」だ。「北朝鮮が核兵器を廃棄して経済を開放するという決断を下せば国際社会も相応する決断を下すはずで、周辺諸国などの支援で今後10年以内に北朝鮮の1人当たりの国民所得は3000ドルになる」というものだ。
「徹底的かつ柔軟な接近で、第2次南北共同宣言の完全な履行を通じた北核廃棄を導き出すことが、対北政策の優先的課題」
李明博次期大統領は、この言葉を実現するために「対北5大重点プロジェクト」を示した。
300万ドル以上の利益を挙げる企業を100社育成すること、教育の分野における30万の人員養成、400億ドルの対北支援・国際協力資金の拠出、ソウル―新義州間の「新京義高速道路」整備の支援、北朝鮮住民のための福祉支援(食糧支援、医療支援など)の5つだ。
北朝鮮に離散家族や韓国人拉致被害者・国軍捕虜の問題解決、北朝鮮住民の人権状況改善などを求めていくことも含まれる。
対北5大重点プロジェクトは、北朝鮮の核問題が解決される時期と必ず連動しなければならない。
核問題開発について、李次期大統領は「3段階別の連動」を提示した。
第1段階は、北朝鮮の核施設無能力化が完了する時期だ。南北経済共同体実現のための協議を進め、実質的な経済協力に必要な法的・制度的なシステムを整備する。
第2段階は、北朝鮮が核廃棄に本格的に移行する時期だ。5大支援分野でいうと、教育と福祉分野のプロジェクトを推進することになる。
第3段階は、北朝鮮の核廃棄が完了したときだ。経済、教育、財政、インフラ、福祉など、5つのプロジェクトすべてに取り掛かる。
前政権の「太陽政策」との差は大きく3つ挙げられる。
最大優先順位が北朝鮮の核問題解決になっていること、経済支援が北朝鮮の核廃棄の過程と連動すること、対北支援の目的が北朝鮮住民の実質的な生活向上に寄与するように厳格に検証されることだ。
今年1年間の南北関係は、一時的な停滞を免れることはできないだろう。第1次南北首脳会談から8年間続いた太陽政策の基調には、厳格な修正と見直しが加えられる。実質的な対北政策の輪郭が見えはじめるのは、今年の下半期以降になるだろう。
新政府の対北政策は、金正日政権が韓国政府と社会を混乱させるために弄した術を無効にするだろう。韓国の安保を強化して、こちらの要求を貫いていたかつての南北対話に戻ることを期待している。
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