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「成長率7%」バラ色の公約
求められる「経世済民」
広がる格差 成長策は通用するか
「経済政策失敗」なら「親北復活」も
選挙戦が正式にスタートする前、李明博氏は、今回の大統領選を「親北勢力対保守勢力の一大決戦」と捉え、そのことを声高に叫んだ。この姿勢はすぐに消えた。政治スローガンは影を潜め、ひたすら経済再建を叫ぶようになった。
各世論調査は、対北問題に関心を示さない有権者の動向を示していた。ハンナラ党は機を見るに敏であったと言えるのだが、あるいは、親北政権を交代させるというテーマに自信をなくしての選挙スローガンのチェンジであっただけかもしれない。
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昨年7月20日、ソウル市内で起きた非正規雇用労働者のデモで連行される参加者。李明博氏の経済再建政策には格差を縮める手はまだ見えない |
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現に、李明博氏のハンナラ党は、昨年夏、金大中―盧武鉉政権も顔負けの対北融和政策を打ち出している。「理念なき第一党の姿がさらけだされた」と、保守系識者たちの批判を浴びたものだ。李会昌氏が、自ら育てたハンナラ党を脱党してまで、急遽、選挙戦に名乗りを上げざるを得なかったのも、そうした理由によるものであったかもしれない。
ともあれ、焦点を経済問題に集中させたハンナラ党の選挙戦術は功を奏した。対北融和政策しか訴える能がなかった鄭東泳候補ら親北派の足下をすくう格好となったからだ。
李明博氏は48.7%の得票率で2位の鄭東泳氏に大きくミズをあけて勝利した。勝利宣言にも余裕が見られた。保守系メディアは「李明博神話」に筆を踊らせている。
勝利に酔いしれている場合なのだろうか。
国民は対北朝鮮政策を不問に付したまま、青瓦台の新しい主の出方を見守ろうとしている。
投票直前、KBSが実施したテーマ別世論調査で、「対北政策」は太陽政策が58%の支持を得ていて、全体では「経済再建」を最優先とする答えが60%以上を占めた。ようするに、有権者は、背に腹は替えられなかったのだ。
このことは、李明博次期大統領の経済政策が行き詰まれば、親北勢力が、再び大手をふって青瓦台の主として戻ってくることを示唆しているし、実際、そうなる可能性は低くない。
李明博次期大統領の経済立て直し策は一言でいえば、海外からの投資環境の改善と、規制緩和だ。成長率を7%に引き上げるという。市場原理は、盧武鉉政権時以上に導入されるということだ。
市場原理とは、「経済の弱肉強食」を意味し、競争原理とは、あらかじめ弱者を排除したところにスタートラインが引かれることを意味する。
国民が直面する現下の経済状況はどうか。
「われわれは自殺の道しか残されていないのか」
選挙戦のさなか、非正規雇用労働者の集会で絶叫が轟いた。
非正規雇用が労働人口に占める割合は30%以上に達している。不平等が深化し、貧困層が量産されている実態が、ワーキングプアと呼ばれる人々の姿に映し出されている。
この状況で、李明博氏は成長率7%を恃たのんだ政策を用いるという。グローバリズムの波に喘ぐ、中小企業をさらに打ちのめし、格差社会をもっと広げる危険性はないのか。
考えても見るべきだ。貧困率、失業率、労働市場の柔軟化(整理解雇と派遣業の拡大)などで世界の最高水準をゆく今の韓国の経済状態は、金泳三政権時代、突然、アジアの金融市場を襲った外貨危機に始まったということを。
この時も国民は「経済再生」を声が枯れんばかりに叫んだ。そして金大中氏が満を持して登場した。
労働市場の柔軟化。家計信用の拡張。国民基礎生活保護法の制定。公共勤労制度の実施。財閥の解体。金大中大統領(当時)の経済政策は、ほぼ、IMFのコンディショナリティー(制約条件)に沿った緊縮策と自由化策にほかならなかったが、国民の目にはアグレッシブに映った。国家競争力は回復の兆しを見せていた。国民はおおむね、彼を選んだことに間違いはないと思った。金大中氏の政権を、国民が「左派」と信任した理由は、必ずしも、金大中氏が金日成・金正日信奉者であったということからだけではなく、そうした政策への評価も含まれていた。「IMF危機を乗り切った大統領」。国民は誇らしげですらあった。
後継者として登場した盧武鉉大統領の時代になって、国民はようやく首を傾げるようになった。
「指標で景気は悪くないというのに、生活が良くならないのはどういうわけか」
全経連傘下の韓国経済研究院は昨年11月21日、「2008年の経済展望と政策課題」というレポートを作成した。この中で、「盧武鉉政権の間に現れた経済指標は、輸出を除いて歴代政権の中で最悪。輸出好調にもかかわらず、雇用創出は極めて不振だった」と評価している。
国民経済をなおざりにして、国家競争力を高めねばならない事情が、盧武鉉政権にあったことを意味しており、この政策は金大中氏の要請でもあった。「左派」と呼ばれる政権が、本来の「左派」とは逆行する政策を採った。なぜか。国民が生活苦に喘ぐのをよそに、20億ドルもの対北無償援助が行われた事実を見れば、国家競争力を確保せずして、金正日政権を救うことができないという判断に立ったことになる。
親北政策が、国民経済をないがしろにしたという総括を、ハンナラ党は大統領選でなぜ行えなかったのか。これを主張しなければ、李明博次期政権の採用する経済政策は、盧武鉉政権のそれと変わるところはなくなり、政権はいつでもまた、親北派に取って代わられることになりかねない。
今の時代、「経済再生」は、いずれの国のリーダーも掲げるスローガンで、地球全体が格差社会に覆われる中、市場原理を導入すれば、国民経済は打撃を被る構造になっている。20年前の『マンスリー・レビュー』編集長のポール・スウィージー氏の指摘がある。
「完全な市場機構は、正義とか公正をもたらすものではなく、人民の生活には反対に害の多いものだ」
李明博氏の政策も、決して国民に優しいものとはなり得ないだろう。それでも、李明博次期大統領は「誰のための経済であるか」を考え、訴えるべきなのだ。まさしく「経世済民」(経済)の思想が、新大統領に求められている。親北政権とはちがうのだという根拠が求められているということだ。
盧武鉉政権は「親北政権」であることを自任した。韓国では親北派を「左派勢力」、もしくは「進歩勢力」と呼んで疑問を覚えずにいる。
「左派」であるかどうかの論証は別の機会に譲るとしても、「親北」であることと「進歩」が並ぶはずもない。「進歩」から最も遠く外れているのが、北朝鮮の政権ではなかったか。この北朝鮮におもねる人々が、「進歩派」であり得ようか。世界の常識だ。
恐るべき価値観と知性の転倒、時代錯誤の中で、韓国民に北朝鮮を認めさせ、金正日政権を受け入れさせようとしてきたのが、親北政権であったということを、李明博新政権はどこまで明らかにできるのか。金正日政権が、韓国親北政権という代理人を通じて韓国をも支配しようとする企図は、大統領選挙で消え去ったわけではない。
「経済再建」を掲げて新大統領となる李明博氏が、経済問題で信を問われれば、北の企図は蘇る。性根を据えねばならない国政の運営は、2月25日に始まる。
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