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2008年1月30日発行版
 
シリーズ 08年「在日」事情 第4回  民団の今と明日
 

支部 人材求めるが、3・4世呼び込めず

 民団の団員数が減っている。地方で在日韓国人人口の過疎化が進んで久しい。支部では、在日韓国人1世が去り、2世3世の健闘が目立つものの、多くが後継者難に喘いでいる。そうした現状で、「ニューカマー」と呼ばれる「新来定住韓国人」が期待されるようになった。彼らは地域と地場産業に根ざしており、相互扶助の団体も形成している。民団支部運営に彼らの協力は不可欠となっている。(金総宰)

 

都内の支部で

 昨年夏、東京・新宿の民団支部で役員が対立する騒動があった。傘下団体長の選挙をめぐる内紛だった。原因はたわいないものだったが、騒ぎは広がった。ところが、その余波でもう一つ深刻な事態が起こり、支部は頭を悩ます羽目となった。副団長を務めるAさんが、内紛に嫌気をさして辞表を出したのだ。事態は図らずも現在の民団組織の抱える問題を浮き彫りにした。
 Aさんは、実はニューカマーだった。オールドカマーとニューカマーが力を合わせて、支部の活力アップを図ろうとしていた執行部は、Aさんの辞表にショックを受けたのだ。団長はAさんの辞表を受理しようとはしなかった。Aさんは、いつしか支部の中心的な役員となっていた。
 Aさんが日本に来たのは80年代で、東京を拠点に事業を展開してきた。支部副団長を引き受けたのは1年前だ。
 民団がニューカマーを幹部に迎え入れるのは、人材不足に祟られたからにほかならない。だが、Aさんにかぎらず、ニューカマーは、言葉や生活習慣などの問題から、オールドカマーの民団運営になかなかなじめない。
 民団は民団で2世3世の人材発掘に迫られているが、ままならない状況を抱えている。「なんとか、ニューカマーに民団を理解してもらいたい」と、支部運営で彼らの存在を頼みとしているのが実情だ。


団長の本音

 「どこの支部でも同じだと思うが、いちばんの問題は人材不足だ。後継者が本当にいない」
 ゙章煥団長は本音を吐露する。
 支部を長く支えてきたのは、喫茶店、焼き肉店、鉄屑回収業、焼酎作りで生計を営んできた自営業者の1世たちだった。彼ら1世が民団組織の原点だった。が、ほとんどは世を去った。
 2、3世の時代になると在日韓国人は大手企業に就職する人たちも出てきた。民団へと足を向けるのは自営業を営む1世たちが中心にならざるを得なかった。世代が変わるにつれ、支部の中心にすわるはずの在日韓国人自営業者の数が減る中、民団がニューカマーに熱い目を向けるのは自然の成り行きだったといえる。
 新宿区に住むニューカマーは12月1日で約8000人。韓国・朝鮮人(外国人登録者数)は1万116人。このうちオールドカマーをさす特別永住者は1516人。オールドカマーとニューカマーの両方を含む一般永住者は1193人。ニューカマーは韓国・朝鮮人の八割を占める。彼らは「韓人会」という親睦組織を運営している。
 従来の在日韓国人の中には「彼らとは考え方が違う」という人もいて、「水と油だ」とさえ言う人もいる。実際は違う。「水と油」ではなく、ニューカマーには、彼らなりに日本に定着するだけの意識の下地があるということだ。
 ゙団長の言葉だ。「あと20年で1世、2世はいなくなる。民団はこのままいくと数字的にもなくなってしまう。この人たちを何とかして支部に入れなくてはならない。支部に執行委員制を敷いてニューカマーに執行委員になってもらいたい。民団の将来を考えると、民団をニューカマーに渡さなければならん。彼らにもそういう意識を持ってくれ、と言いたい」
 全国の在日韓国人社会に共通する危機感だと言っていい。
 ゙団長は続ける。
 「ニューカマーという言葉を使うことにもためらいを感じる。用語も民団のなかで問題にしていったらいい。どちらも意識を変えなくてはならない」

新旧の接点

 ニューカマーの本音はどうか。
 「貢献できることがあるならと思って民団に入った」 
 支部に辞表を提出した副団長のAさんは言う。
 従来の在日韓国人とは違ったライフプランニングやライフスタイルを持つニューカマーが、民団のような団体で活動するには、3つの条件があると言う。
 民団に参加するメリットを示すこと、彼らにビジョンを持たせること、在来の韓国人とつながりを持ってやっていける仕組みを作ることの3つだ。
 「民団の人は素直な人が多いが、日本社会で日本人とほぼ変わらない生活を送ることができる。新規参入の人々は、サバイバル同然の日本社会で必死に生きており、それは在来の人の想像を超える。そういう人たちを理解し、接点をつくらないとしようがない」
 民団の役割とは何か。Aさんは言う。第一には団員の親睦、権益擁護、地位向上だ。さらに「団員に便宜を図ることだと思う」。
 新宿で商売するニューカマーは、新宿の在日韓国人の六割を占める。ビザや生活条件にさまざまな便宜を必要としている。高齢化している民団を背負って行けといわれたら、若い人たちはびっくりして民団に入らなくなるのではないか。Aさんはこう予期している。
 韓人会や貿易協会はニューカマーが情報交換することが目的だ。
 「民団が、彼らのワーキングビザを取りやすくする取り組みなどをすれば、ニューカマーはそれを、民団が自分たちを受け入れるメッセージと受け止めるでしょう」

 

選手も応援も力が入る(写真提供=民団山梨)
 
   

民団山梨の場合 新生在日韓国人たちの活躍

 山梨県は、いわゆる民団員の過疎県だ。県本部(鄭郁団長)は甲府市に置かれており、都留市に唯一の支部がある。都留支部の運営は本部で行っている。山梨県では ニューカマーが中心になって地域の韓国人社会をけん引している。 
 「山梨には地場産業組合、協会、民団といった団体がある」―ニューカマーから見た地域社会の像だ。民団は“ワンオブゼム”に見られている。
 ニューカマーのほとんどは、貴金属加工の盛んな山梨県に移住し、地場産業である宝飾加工業の下支え役となっている韓国人技術者と家族たちだ。1998年から「韓人山梨貴金属協会」をつくっている。
 事業者は現在、500―600人、家族を含めた世帯人口は1500人。ビザは1年の就労ビザから3年のビザ、一般永住権者とさまざま。 
 このうち70世帯が民団に加入している。副団長1人は協会所属のニューカマー、民団の傘下団体である山梨青年商工会の会長もニューカマーの権五永さんだ。
 30―40代が中心で子どもが多い。子どもは小学校から高校まで本名で教育を受ける。
 「そのパワーはすごいものです。見習わなければいけない」
 県本部事務局長の金義紘さんは感心する。逆に、もともと人口の少ないオールドカマー2世の子どもである3世たちは民団行事に出てこないという。
 民団の運動会、子どもキャンプ、忘年会といった行事は、民団と貴金属協会の共同開催だが、「すべて協会が中心」(金事務局長)だ。
 協会長の李正炯さんに「民団の活動でもっとも神経を使うことは?」と聞くと、「1世2世が民団に出て活動できるように活性化を図っていくことだ。しかし言葉が問題だ」と言う。オールドカマーとニューカマーがうまく意思疎通できないためらしい。
 「民団の団員は減っているが、困難なことはない。互いに協調し助け合うことだ」
 一方で、こんな声もある。
 「民団運営をニューカマーに半分以上任せるとしたら、少しさびしい。ソリの合わないところも出る」
 5―6月に県本部の新会館が現在地から近いところに建つ。入り口には貴金属協会の看板もいっしょに懸けられることになっている。

 

新宿、生野、甲府など全国で18万人

 日本に住む韓国人ニューカマーは18万人余りといわれる。各地の韓国人社会で存在感を増している。
 東京・新宿区には8000人が住み、韓人会(在日韓国人連合)を組織する。上野には貴金属加工に従事する事業者の相互扶助組織である在日韓国人貴金属協会がある。1998年設立。地場産業、寄り合い、組合活動、相互扶助を目的にしている。会員数は430人。家族合わせて1000人。御徒町周辺で営んでいる。
 山梨県には、甲府市にニューカマーの宝飾業従事者が500―600人おり、「韓人山梨貴金属協会」を組織する。山梨韓国青年商工会の会員も八割をニューカマーで占める。
 山形県には、農村に嫁いだ韓国人女性が多い。
 在日韓国人の最大の集住地・大阪に暮らすニューカマーは中心部・生野区、中央区に多い。就労ビザで、飲食店で働く人が多い。
 昨年の在日韓国・朝鮮人数は、生野区3万1000人、中央区3000人、東成区7000人、西成区5800人、平野区5400人、東大阪市1万4700人、堺市5700人など。「場所によっては、オールドカマーとニューカマーの人口逆転が起きている」といわれる。とくに生野区はニューカマーもオールドカマーも多い在日韓国人の中心地のひとつ。住民の4分の1から3分の1が韓国人だ。労働者の受け入れ体制も行政レベルですすんでいる。
 民団支部は、府下に34支部を数える。ニューカマーの存在感は増している。
 沖縄では、米軍基地従業員として滞在する人が多い。10年以上前から民団の役員や事務員はニューカマーが務める。

 
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