| 戻らない景気 低迷続く遊技業界
止まらない客離れ 負債総額55億3400万円
パチンコ業界は、スロットの5号機導入から5カ月目を迎えようとしている。5号機は従来機種より射幸性を抑えたものだった。だが、業界は予想以上の客離れと深刻な売り上げ低下に頭を悩ませている。レジャー産業の増加やカジノ合法化案など、先行き不安な状態に置かれ続ける遊技業界。店舗の閉鎖や休業が相次ぐなか、各社は生き残りをかけ、急ピッチで打開策を模索している。
(社会部取材班/金総宰、金惠美、鄭重国)
導入新機種が足かせ
「まさかこれほどまでに五号機の性能が悪いとは…」
神奈川県内でスロット専門店を営む在日韓国人のAさん(46)はがっくりと肩を落とした。
Aさんの経営するスロット店は3店舗。最盛期には、1店舗あたりの売上高が年間で15円以上にのぼっていた。
昨年11月、Aさんは3店舗のうち2店舗を閉じた。さらに翌12月には残る1店舗も閉鎖した。負債総額はおよそ2億5000万円。15年間にわたって営業してきたスロット店は、わずか2カ月で駅前から姿を消した。
店舗閉鎖に至った原因を、Aさんは次のように述べる。
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店頭を照らす灯りは輝いているが・・・ |
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「昨年5月から5号機に移行し始めた。手形を割る回数を分散させるためだったが、移行開始が早すぎた。移行期間が終了する9月末ぎりぎりまで4・7号機で運営し、手元に現金を多く残すべきだった。5号機の購入資金にもなり、ある程度は負債を減らすこともできたはずだ」
店舗閉鎖を決めたのは昨年10月。スロット機の客離れにより、売り上げは最盛期の3割まで落ち込んだ。毎月先延ばしにしていた手形の支払いも、ついに首が回らなくなった。キャンペーンを打ち出しても、すでに客が離れた状態では焼け石に水だった。Aさんは、所有していた店舗の土地と建物を売却し、負債処理と従業員の給与、買掛金の清算にあてることを決めた。
Aさんは現在、今後の方向性を決められずにいる。
「すべてを清算したらパチンコ店を始めたいとも思うが、まだ決めていない。異業種は経験がなく、元経営者を雇ってくれるとも思えない。皮肉だが、新規事業を始めるためにも、同業の店舗が安く売りに出されることを望んでいる状態だ。何もかもが暗中模索の状態だ」
民間信用調査会社の帝国データバンクは昨年12月12日、同年11月末現在におけるパチンコ企業の倒産件数と負債総額を発表した。調査結果によると、11月の1カ月間に倒産した企業は6件で、負債総額は全体で55億3400万円に上っている。昨年1月からの累計では、倒産企業数は64件で、1昨年の倒産件数54件を10件も上回る結果となった。
全日本遊技事業共同組合連合会(全日遊連)も昨年12月17日、同年11月末現在における組合加盟ホールの動向結果を発表した。これによると、全国における昨年の廃業店舗数は、10月の時点で1000店舗を超え、11月末現在では合計で1121店舗が廃業した。休業した店舗は昨年1月から120店舗増加し、361店舗にのぼった。営業店舗数は1月の1万3537店舗から軒並み減少の一途をたどり、11月末には1万2656店舗まで減少した。
混迷する業界の現状を踏まえ、民団(鄭進団長)は「遊技業の低迷が長期化することは在日韓国人社会にとって死活問題である」とし、昨年12月の中央執行委員会で「レジャー産業健全化推進協会」を結成することを決定。今月10日、正式に発足した。民団はさらに昨年12月13日、遊技業界の規制緩和を求める陳情書を国家公安委員会の泉信也委員長に手渡している。
遊技業の再建をかけた動きは、在日韓国人社会以外でも広がりを見せつつある。
中でも積極的なのは、中小のスロット機メーカーだ。業界の低迷によるホール数の減少で、中小規模のメーカーが煽りを受けている。
中小メーカー数社は昨年12月、パチンコ・スロット機メーカー各社に向けて陳情活動への参加を要請した。内容は、5号機をベースとした5・1号機を製作する段階で、部分的な規制の緩和を求めるというものだ。
さらに中小メーカーは最近、大手ホールを対象としたスロット台のレンタルや、台単価を低価格に設定した独自ブランド機種の開発にも着手しはじめた。「大型版権」を持つことを強みとする大手メーカーとの差別化をはかろうと、試行錯誤を重ねているという。
昨年末、パチンコ台とスロット台を製作していた某中堅メーカーでは、パチンコ台の製作にかける開発費を従来比で7割増加させた。パチンコ台の専門メーカーへと移行するためだ。
5号機の導入に伴い、中小規模のホール業者から反発を受けたメーカーも少なくない。
「ただでさえ面白味のない機械なのに、価格まで吊り上げたら採算が合わなくなるのは必至」
「値上げしたまま売り続けるなら、ホール数は1万店舗を切るだろう。やがてはあなたたちの首を絞めることにもなるよ」
ホール業者の声に対し、大手メーカーの反応は鈍い。継続的なCMや広告の影響もあり、人気機種は必然的に売れるからだ。
台単価の値上げについては、メーカー側にも言い分があった。
5号機の導入に伴い、これまでスロット台を一万台納めていた大手ホールでさえ、8000台前後に留めるようになった。スロット機をすべて撤去する店舗も少なくない。メーカー側にとっては大打撃だ。メーカーは、納入数の減少によって生じた損失分を、スロット機に華美な装飾を加えることで補填する必要があった。スロット台の枠やハンドルの内部に施された過度な装飾に加え、スロット台の審査費用を「開発費」との名目で台単価に組み込み、採算を合わせているという。
「昨年6月、(社)日本遊技関連事業協会(日遊協)に加盟するメーカー1社が倒産した。日遊協の加盟メーカーは絶対に倒産しないという『神話』がまかり通っていただけに、業界に衝撃が走った。今後はメーカーの再編が活発になるだろう。M&Aが加速化し、大手に吸収・合併される中小メーカーが急増する見込みだ。この先甘い蜜を吸えるのは、ホールもメーカーも大手だけだ」
メーカーの展望について、大手機械メーカーの開発担当者はそう話した。
遊技業を基盤産業の一つとしてきた在日韓国社会にとって、業界の低迷が与える経済的打撃は計り知れない。遊技業経営企業の倒産やホール数の激減により、日本社会における雇用不安を引き起こす可能性もある。遊技業界の現状と今後の見通しについて、全日遊連関係者の声は暗い。
「5号機導入のための資金繰りに苦労した店舗は今後、さらに状況が厳しくなるだろう。機械入れ替え期限だった昨年9月末が倒産の第一波とすれば、年末年始は第2の波。年明けに手形を割ることのできないホールが続出したものと見込んでいる。今後はメーカーもホールも、業界全体が一丸となることが求められるだろう」
業界関係者の間では、全国で1万店舗前後まで店舗の閉鎖が相次ぐものと予測されており、行政側の早急な対策を求める声が高まっている。
BSE問題から6年不安続く焼き肉業界
日本人経営者増え競争激化
焼き肉業界に景気は戻ったのか。BSE問題で打撃を受けてから6年が経った。
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焼き肉は日本人の食文化となっている |
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事業協同組合全国焼肉協会(JY)の統計資料(102店舗月間売り上げ比較 前年度比較)を見るかぎり、景気は戻りつつある。昨年度と今年度の4月から11月までの売り上げを比較すると、月間平均63%の増加だ。
ただ、現実は少し違うようだ。
「飲酒運転の罰則強化が大きく影響している。グループの忘年会が少なくなっており、小グループ化が目立つ」
京都に本店を置く「焼肉の名門・天壇」の役員、Kさんの口調は重い。
大阪に本店を置く業界大手の食道園・江崎真史常務取締役も「よくないの一言に尽きる」と表情を曇らせた。
「売り上げは1、2割ダウンしているだろう。飲酒運転の罰則強化の影響も、郊外型の店では多少あるようだ。船場吉兆の偽装問題で、産地を気にするお客もたまにいるが、焼き肉業界は以前から産地を明示することを心がけてきているので、それほど影響はない」
東京の韓国食材店の関係者は「業界の状況を把握しているわけではない」としながらも、全く展望がないこともないと指摘する。
「小売りのほうは、店舗が出すぎて飽和状態だ。店舗縮小や減少傾向のフランチャイズ店もある。うちの売り上げは、昨年と変わらないか、やや減少している。会社の名前が知られているほうなので、問い合わせは多い。新規の単独店舗からの需要は増えているようだ」
東京・港区の「炭火焼肉・韓国酒家 ビヤンド」も、売り上げの下げ止まりを感じている。経営者の韓栄美さん(58)は、店舗数が増え、味が大味になることを心配している。
「最近の焼き肉店はファッショナブルになりすぎている。原点に戻って、味と心を大切にがんばるしかない」
40年以上の歴史をもつ東京・港区の「焼肉 晩翠」の金尚建(23)さんは業界の競争激化を気にかける。
「以前、焼き肉は高級なイメージがあったが、低価格を売りにした日本人経営の焼き肉店が増えてきた。競争が激しくなっていて、守っていくのは大変だ」
金さんは有名店ではさほど景気に左右されることはないと話すが、業界は変わる時期に来ているのを実感している。
「入りやすくて、見て楽しめ、食べて楽しいものにしたい」
BSEの時は売り上げが6割も減って大変だったが、別に営んでいる居酒屋のほうで補い、助かったそうだ。
「米国の肉が入らなくなり、仕入れ値が上がった。今後はいろいろな味で食べてもらえるようにしたい。正直にがんばっていきたい」
「焼き肉=在日韓国人経営」だった時代は過ぎようとしているが、やはり韓国人の仕込む味は人気があると、「天壇」や「晩翠」の味を楽しむ客たちは言う。この客たちを、再度呼び込む工夫を経営者たちは考えている。
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