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2008年1月1日発行版
 
新政権 たてるべきは政治理念
 
 

 「経済の指導者」としての新任を受けた李明博氏が大統領選挙に圧勝した。政権交代は当然の結果だ。国民の政治に対する疑問は深まっていた。「成長率は維持されているのに、なぜ、生活は苦しいのか」
 謎は、韓国でも大量に生み出された“ワーキングプア”の存在によって明らかになった。働いても貧しさから抜け出すことのできない人々の群れだ。成長の成果が、もっぱら市場強者の手に渡ったという把握は重要だ。
 OECDの報告がある。韓国の貧困率(13%)は主要国で米国(17%)、日本(15.3%)に次いで高い。労働関連指標では、1人当たり労働時間と労働柔軟性(整理・解雇と派遣業の拡大)で1位。労働所得分配率は、日本の72%よりも15%低い。「左派」政権の失政は誰の目にも明らかだった。


IMF危機を忘れるな

 苦言を呈したい。韓国の有権者は、一度ならず二度までも、「左派」と呼びようもない、そうした「左派」政権を選んだのではなかったか。外貨危機の時、金泳三政権の無策と、IMFの強要を受け、構造調整に乗り出した金大中政権の「経済再生」に救いを求めたことを、国民は忘れるべきでない。
 金大中時代、「国民基礎生活保障法」といった安全策は用いられたが、「集中と選択」の名の下、労働市場の柔軟化は一気に進んだ。ひたすら国家競争力の確保を急いだのだ。
 「集中と選択」とは、言葉を換えた競争原理で、「排除と偏向」を意味した。「生活保障」などの国民生活への安全策は次第にかすみ、市場効率化だけが叫ばれた。成長はほとんどIT産業と、その関連部門にとどまった。つまり、雇用なき成長でしかなかった。
 この状態のまま政権のバトンは盧武鉉氏に渡り、国民はまたしてもこれを歓迎した。が、そこで目の当たりにしたものは何か。グローバル化による競争激化に耐えられず、中小企業の大半が倒れ、大企業が軒並み正規雇用を控える姿だった。
 そうまでして国家競争力の確保が急がれた理由は何か。金泳三政権のような無策からではない。政権の姿勢からは、国民経済よりも、金正日体制を救済せんとする確固たる目的が見え隠れした。金大中政権時代の対北無償援助は5億3690万ドルで、盧武鉉政権下では14億5286万ドルに上る。貧困と失業率が世界最高水準に達しても、やむことのなかった対北支援。「左派」政権の実体ではなかったか。
 専門家たちは太陽政策で南北関係が安定したため経済問題が選挙焦点になったと言う。そうではないだろう。本質的には、親北政権を認めるべきか否かをめぐる選挙だった。そして彼らは敗れた。


格差是正を図るべき

 重大なことは、盧武鉉政権を親北政権として退けたという自覚が有権者に乏しいことだ。このことが禍根とならねばよいがと懸念する。
 李明博氏は、規制緩和と、さらなる投資の拡大を言い、成長率を7%に上げる旨を公約に掲げた。これだけでは、経済政策の上では前政権と変わるところはない。むしろ、前政権以上に、市場原理が追求され、格差は広がるだろう。その時、不問に付された対北問題が、金泳三政権末期の時のように浮上するかもしれない。親北政権が再登場する芽は、残されていると言える。
 親北政権と李明博次期政権の決定的な違いは、経済は誰に資すべきかという、政治理念の差にあるはずだ。これがかすんでしまっているのである。
 格差問題が市場機構を窒息させるかもしれないと言われる中、果たして次期政権の成長策は、通用するのか。貧困率の上昇は成長神話に囚われるBRICsなどの国々に見られ、OECD加盟国でも、米国、日本、韓国など成長幻想覚めやらぬ国が格差問題に苦しめられている。貧困率で北欧諸国が最も低い理由を新大統領は考えてみるべきだ。経済格差の是正で効果が表れない時、新大統領は国民にどう説明するのか。理念なきハンナラ党に求められているのは、北欧諸国がこの数十年、国民経済を安定させるべく懸命に追求してきたような政治の理念である。

 

 
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