経済再生への望み託し
韓国では、昨年12月、国民の直接選挙によって、野党のハンナラ党の候補である李明博氏が、48.6%という高い得票率で当選した。貧富の格差が大きくなったことや非正規社員が多くなったことなどの与党の経済政策失敗に対する国民の強い不満と、李氏に対する経済政策の期待感の表れと評価される。与党候補の得票率は26.1%に止まった。
大統領当選者の公約の中には、「大運河」と称される国土縦断運河の建設がある。北朝鮮との境界線からスタートして、ソウル・大邱(テグ)を経て、プサンまでと、ソウル・大田(テジョン)を経て、木浦(モツポ)までを、運河で結ぶというものである。
建設予定地は急騰
国民の圧倒的な支持を得て当選した李氏が「現代建設」の社長だったことや、ソウル市長のときに、ソウル都心を流れる「清渓川チョンゲチョン」を自然の状態に復元(2005年完成)することに成功した経験があることから、大運河計画は間違いなく実施されると見られ、すでに建設予定地の不動産が急騰している。清渓川は、セメントで蓋をされ、その上には高架高速道路が走る汚染された川であったが、その高架高速道路と蓋が撤去され、きれいな水が流れる観光名所に変わったことが世界的に話題となっている。
大運河計画は、自然の川を浚渫して結ぶという計画であり、そこから産出される砂利や砂を不足している建設資材として販売して、建設費用の半分以上に充てるというものである。その効果は、雇用の創出、泥などの浚渫・周辺の開発などによる環境保全と水質の改善、ダムなどによる自然災害の防止、観光の振興、特に貨物の物流費の節約などとされる。韓国における物流の費用はGDPの9.7%であり、米国の7.5%、日本の4.8%に比べても格段と高いが、その物流費用を3分の1にまで減らせるとも主張される。
鉄道・高速道に勝てぬ?
これに対して、反対論者は、建設期間が終われば仕事がなくなり、工事費用は莫大なものとなる。さらに、水を止めると水質が悪くなり、鉄道と高速道路があるので利用率は低いとも主張される。確かに、日本などの多くの国には、運河が自動車と鉄道の発展に伴って使われなくなったものも少なくない。荷役が機械化された港湾と運河または道路との連携に問題があったことが原因であるともいえる。
しかし、2020年における韓国の貨物運送は、現在の2倍の20億トンに増加すると予測されている。実際に、韓国では、高速道路、鉄道が絶えず急速に建設されてきたが、増え続ける物流と自動車に追いつかず、交通渋滞は益々深刻なものになってきた。韓国の幹線道路には、貨物を積んだ大きなトラックが非常に多く、そのトラックが交通渋滞と大気汚染の主な原因となっていることは否めない。反対派の主張は、運河建設における問題点を指摘するものであるが、交通渋滞による空気汚染などの環境破壊と物流費用の増加などの経済損失に対する解決策を提示するものではない。
運河建設における問題点も少なくないとはいえ、大運河の建設によって、多くの貨物運送が運河で行われるようになれば、交通渋滞は劇的に緩和されることは、容易に予測できる。韓国の新たな大きな挑戦が始まろうとしている。
(早稲田大学教授・李洪茂)
内陸運河 水利、用水、灌漑、排水、給水、交通、運輸などを目的にして、船舶の航行などの便宜のために、内陸まで船が通るために掘った水路。運河は古くから内陸の交通手段として小船を通すために造られた。土木技術の進歩で、19世紀後半から大型船が通れるような運河の建設が行われた。 |