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2008年1月23日発行版
 
韓国の絵本 威張るトラや忠義者のイヌが・・
東京純心女子大学准教授 大竹聖美
 
 

 韓国絵本の出版が相次いでいる。日本の絵本と似ているようでどこか違う。韓国児童文学に詳しい東京純心女子大学の大竹聖美准教授に聞いた。

「韓国の絵本は、世相や社会問題をはっきり描写したものが多いように見受けられます」
 

 韓国の絵本の歴史は長くはありません。本格的に手がけられたのは90年代になってからです。
 民主化運動をリードした386世代の作家が幼子を持つようになった時期です。この世代はご存じのように非常に民族意識が強い。彼らの中では、朝鮮の伝統や文化をモチーフにした作品が大半を占めました。「我々の文化を伝える絵本がない」という危機意識のようなものがあったのでしょう。
 韓国の伝統的な紙すき技術を用いた「韓紙」の上に、独自の画材を使った絵本が好まれました。88年に韓国で初めて出版された絵本『山になった巨人―白頭山ものがたり』や94年の『くらやみのくにからきたサプサリ』などはその代表的な作品です。神話のような創作物語が注目されました。
 「プリチャッキ運動」と呼ばれる民族のルーツ探しの機運が高まっていた当時の韓国事情もあり、絵本作家は増えていきました。今では386世代以降の作家も数多く活躍するようになっています。
 若い作家が題材にするのは、民族の伝統や文化よりも、子どもが見て無条件で楽しめる内容のものが多いように感じます。韓国の絵本が多様化したといってもいいでしょう。
 多様化といえば、現代の感覚が盛り込まれた絵本も最近は出版されるようになりました。
 両班やソンビといった、かつての支配階級が雑巾がけなどの家事をしていたりする、パロディーのような絵本があります。権威主義や男性優位の社会が変わったのだなと実感します。
 国を問わず、また絵本というジャンルに限らず、芸術作品にはその時々の世相が反映されるものです。韓国の絵本は、世相や社会問題をはっきりと描写した作品が多いように見受けられます。
 勧善懲悪ものが多いことや、虐げられても負けない不屈の精神などが、絵本を通して伝わってきます。親が自分の子供に言い聞かせるような、教訓にあふれた内容がふんだんに盛られています。
 絵本には擬人化された動物が多く登場するものです。
 トラは強さや権威の象徴です。韓国の絵本では、強く威張り散らしていたトラが、滑稽なしぐさでやられてしまう内容のものが少なくありません。
 強いものがやられてしまう物語を読んで、ある種、溜飲が下がる思いがするのでしょう。韓国の伝統舞「タルチュム」にも似たようなストーリーの作品があります。両班を滑稽に描くことで、当時の農民はガス抜きをしていた。子どもがそこまで分かるかは別として、こんなところにも韓国の伝統が見え隠れしています。
 イヌは忠義者で情に厚いのが特徴です。韓国の絵本に登場するイヌは、珍島犬かサプサリという韓国固有の犬がほとんどです。伝統重視はここにも表れています。
 私は絵本の翻訳をすることがあります。擬人化された動物に加え、絵本に登場することが多いのが擬音語・擬態語です。韓国語の響きや情感を損なわないよう、できるだけ韓国語の発音に近いカタカナ表記を心がけています。
 なかには、日本の親や子どもに分かりやすいように日本語に置き換えられている訳書も見受けられます。翻訳は、日本語で表記するのが基本ですが、できるだけ韓国の情緒を生かすようにしたいものです。韓国の絵本なのですから。

 おおたけ・きよみ
 白百合女子大学大学院修了。98年から韓国・延世大学院で韓国児童文学を研究。東京純心女子大学准教授。教育学博士。

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