| ジョークでわかる中国の笑えない現実 黄文雄著
怒りのジョーク
著者はかの黄文雄。多くの著書で物議をかもしてきた人物だ。とりわけ、中国共産党への仮借なき批判は、特徴的だといえる。
本書は280ページにわたって、中国のジョークを満載している。
もちろん、黄文雄が選んだのだが、紹介されるそれは、いずれも刺激的だ。
ジョークの生まれた背景の解説は、非常に読みやすく、分かりやすい。黄は解説で、共産党や人民解放軍、役人、人民、はては中国という国家そのものを批判する。ジョークに、その国や民族の知的水準や文化が表れるというのは本当だと読んでわかる。
米国では、バラエティー番組の司会者が放つジョークで選挙戦に影響を与えることは少なくない。
日本でも戦時中のジョークをまとめた『日本の戦時下ジョーク集』という本が昨年70万部以上売れた。本書が違うところは、ウィットに富んでいるものの、ある種の恨みがこもっていて、生々しいことだ。
中国民衆の怒りが爆発しつつあると黄は指摘するが、読んで実感できるのだから、本書のジョーク集には凄みがある。
2006年、中国国内で起きたデモ、請願、抗議集会は、11万2655件、延べ1230万人に上るという。黄の言うところの「プロレタリア独裁」という概念はいつのまにか消え、富が強者に集中する事態になった。
「中国は古来から国すなわち家である。一家一族のものだから『国家』と称されるのだ」と解説は続く。「国富は一族一党のものになってしまう」という黄の言葉は痛烈だ。
本書のジョークから、中国社会を読み取ることができる。
(秋一紅)
ゆらゆらゆくよ クォン・ジョンセン文 キム・ヨンチョル著 金広子訳
子供をつつみこむ昔ばなし
韓国の昔話をベースにした創作絵本だ。
韓国の昔話と日本の昔話はどこか似ている。だからか、知っているはずもない韓国のお話が、どこかで聞いたことがあるように思えてしまう。『ゆらゆらゆくよ』もそうだ。落語だったか、童話だったか。
ストーリーは単純だ。山奥に暮らすおばあさんと、おじいさんの話だ。世間の狭いおじいさんに、おばあさんは、丹精込めて織り上げた木綿の布を差し出し、市場に行っておもしろいお話と木綿を取り替えてくるよう頼む。
おじいさんが仕入れてきたお話におばあさんはすごく喜ぶのだが、家に忍び込み隠れていた泥棒、その話がまるで自分のことを言っているようで仰天し、逃げ出してしまうというおまけがついた。
読んで気づかされるのは、この昔ばなしに教訓めいたことが、ことさら何も書かれていないことだ。ただただ、人のいい老夫婦がいて、泥棒までが良い人のように思えてしまう。読んでほのぼのとした気分になればよいという、作家の姿勢が見られる。よく練られたストーリー。ことばの響きを大切に思っていることも伝わってくる。こどもたちが、何よりことばのリズムによく反応するからだろう。
作者クォン・ジョンセンの作品は日本でも何点か翻訳され、出版されている。2000年に出版された「こいぬのうんち」はベストセラーになった。読んだ人はお気づきだと思うが、この作品も、身の回りにある何気ないものを取り上げて、読者に暖かさを与えた。できることなら原書で読むことを薦めたい。ハングルのリズムと、韓国の山村風景が見事に溶け込んでいる。
(松村牧子)
書籍紹介
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パンソリに想い秘めるとき −ある在日家族のあゆみ−
呉文子著
北の「楽園」への帰国事業をめぐる、父、夫との断絶。夫の朝大教授辞任…。在日2世波乱の70年。
学生社刊 定価1800円(税別) |
| 善隣友好のコリア史
朝鮮通信使と吉宗の時代
片野次雄著
文禄慶長の役から和解へ。「鎖国」下の交流を描く、400年前に始まる通信使のエピソード。
彩流社刊 定価1900円(税別)
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| 日本から「北」に帰った人の物語
韓錫圭著
絶望……。どうしても伝えなければならぬ事が冷たく胸の奥に渦巻く…。「脱北者」である著者が、血のインクで綴った渾身の実話小説。
新幹社刊 定価2000円(税別)
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