競争力上位占めた北欧諸国
世界経済フォーラムが、10月31日に発表した『世界競争力レポート2007―2008』によれば、世界競争力ランキングトップ10は、1位のアメリカに続いて、スイス、デンマーク、スウェーデン、ドイツ、フィンランド、シンガポール、日本、イギリス、オランダで、ほかには、韓国11位、中国34位、インド48位。注目は、市場主導型経済のアメリカと並び、高福祉・高負担の福祉国家のデンマーク、スウェーデン、フィンランドなどの北欧諸国が上位を占めていることだ。
知識基盤型経済への急速な移行が今日、各国の課題だ。IT(情報技術)競争力の強化が重要だ。世界経済フォーラムが3月28日に発表した『世界のIT競争力ランキング2007年』によれば、IT競争力ランキングトップ10は、1位のデンマークに続いて、スウェーデン、シンガポール、フィンランド、スイス、オランダ、アメリカ、アイスランド、イギリス、ノルウェーで、ほかには、香港12位、台湾13位、日本14位、韓国19位となっている。
以上の2つの世界競争力ランキングから言いうることは、ITの生産と利用に基づく知識基盤型経済には、アメリカやイギリスなどの市場主導型モデルとデンマークやスウェーデンなどの社会民主主義モデルがあることだ。日本や韓国は市場主導型モデルだけを参考にするのではなく、社会民主主義モデルの比較制度的優位も十分に研究して、自国経済に適合的な知識基盤型経済の制度的基盤の確立に努める必要がある。
フランスのレギュラシオン学派、ロベール・ボワイエの新著『ニュー・エコノミーの研究』によれば、アメリカ、アイルランド、オーストラリアなどのシュンペーター・モデルが労働市場の規制緩和、知的所有権の保護、最高の学歴と才能の持ち主による根本的イノベーション(新技術や新製品の開発)によって特徴づけられるのに対し、デンマーク、フィンランド、スウェーデンなどの社会民主主義モデルは高レベルの教育水準と職業訓練、中程度の雇用保護、漸進的イノベーション(製品や生産方法の漸次的改善)によって特徴づけられる。シュンペーター・モデルが知識の私有化に立脚するのに対し、社会民主主義モデルは知識の広範な社会化に立脚する。ボワイエによれば、社会民主主義モデルの高い経済的パフォーマンスは、知識基盤型の経済成長にとって重要なのは情報通信技術の生産それ自体ではなく、むしろそれを社会的に活用する制度的仕組みであることだ。
ボワイエが知識基盤型経済の社会民主主義モデルの典型として注目するデンマークは、欧州イノベーション・ランキングで上位を占める。05年度の欧州イノベーション・ランキング上位圏は、1位のスウェーデンに続いて、スイス、フィンランド、デンマーク、ドイツ、オーストリア、イギリスなどだった。
デンマーク政府は06年5月、「グローバル経済におけるデンマークの戦略」という副題の『進歩、イノベーション、結束』を発表し、研究開発投資の対GDP比や高等教育機関の修了者の比率を高め、競争力強化と高水準の福祉を両立させる政策を提唱した。戦略をまとめたのは、ラスムセン首相を議長として、05年4月にスタートしたグローバリゼーション協議会だ。イノベーションや新技術の利用についてコンセンサスを獲得する社会的仕組みを持つのが、デンマークの強みだ。
若森章孝(関西大学教授)
知識基盤型経済 21世紀は、知識社会(知識基盤型社会)や知識経済(知識基盤型経済)の時代と言われている。新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめとするあらゆる領域での活動基盤の重要性を意味する。変化の時代に適応するための学習の必要性が、個人・企業・従業員などに求められている。
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