| アジア映画祭シーズン
日本市場に向けて 韓国映画の旬を示す
怒涛の映画祭シーズンが続いている。東京フィルメックスのオープニングでは林加奈子ディレクターから会場の映画ファンに向けて「体調には気をつけて」と気遣うスピーチが飛び出した。同映画祭の後半には中国映画祭2007も日程が重なっての開催となった。12月に入ると、すぐ韓国映画ショーケース2007が迫っている。アジア映画ファンは、体力に加え気力も伴わないと、この季節を乗り越えられそうもない。
そのショーケースはサブタイトルで「国境を越える映画の力」とうたう通り、主催の韓国映画振興委員会(KOFIC)が日本市場に向けていま最も旬で韓国映画の勢いを示す作品9本を推薦して上映する初めての試みだ。KOFICは今年初め作家性の強い韓国映画4本を紹介する韓国アートフィルム・ショーケースを開催したばかり。そちらは芸術性を重視し韓国映画の多様性を理解してもらう企画だったのに対し、今回は芸術性にも配慮しつつ、あくまでも娯楽性にこだわったという。
9本中韓国で最もヒットしたのは鈴木由美子のコミックが原作の「カンナさん大成功です!」(キム・ヨンファ監督)。ラブコメでは「猟奇的な彼女」や「僕の彼女を紹介します」を抜き去り662万人の観客を動員した昨年の話題作だ。物語は体重95キロのハンナが全身の美容整形手術で48キロの美女に大変身し、歌手としても成功するという内容。
ヒットの要因はだれにでも受け入れられるストーリーの面白さに加え、今日的テーマである「美容整形」を扱っていること、原作のコミックが韓国でも大ヒットし親しまれていたこと、さらに主役のキム・アジュンとチュ・ジンモがはまり役で2人の魅力を最大限に引き出している上、脇役がまた実力派ぞろいと、スターを見るだけでも楽しい作品だからであろう。
「快韓コミュニケーション〜もっと愛したい隣の熱いコリアン!!」(生活文化出版)を出したばかりの通訳・翻訳家の尹春江(ユンチュンガン)さんは本の中で「“成功するためにキレイになって何が悪いの?”と考える韓国人の国民性を抜きにして、この映画のヒットを語ることはできない」と紹介している。
一方、昨年の東京国際映画祭で上映された「家族の誕生」(キム・テヨン監督)は、音信不通の弟が年上の恋人を連れ帰ったことにとまどう女性と、男出入りの激しい母親に反発し父親違いの弟につらくあたる姉、そして誰にでも優しくしてしまい恋人を不安にさせる娘の3つの物語からなる。血がつながっていなかったり、事情を抱えつつ思いを寄せ合い家族の形を模索する女性たちの姿を描く。3つの章は最後に意外な形で結びつく。
この2作品は手法もテーマもまったく異なりながら、実は似ている部分がある。それは自分の居場所探しだ。美容整形を決意するハンナは歌手として成功したいという事情に加え、意中のプロデューサー(チュ・ジンモ)から愛されたいという強い乙女心とその夢が破れた上での決断だった。肥ったいまの自分には心安らぐ場所はない。ならば美容整形で夢の居場所を求めようという悲壮な思いだったのだ。
後者の場合は心の通わない肉親よりたとえ血はつながらない他人でも、そこが居場所という共通の思いさえあればうまくいくし、それは時間が解決してくれるのではないかというメッセージが込められている。
居場所をキーワードに今回の九作品を見ていくと、ほかにも当てはまる作品が多いことに気づく。
「バント」(パク・ギュテ監督)は学校側から特殊学校への転校を提案されたIQ60の小学生の父親が息子を廃部寸前の野球部に入れてなんとか逃れようとする話で、父親を「王の男」のチョン・ジニョンが好演している。
「マイ・ファーザー」(ファン・ドンヒョク監督)はアメリカ人の養子になった青年(ダニエル・ヘニー)が実の両親を捜すため駐韓米軍に志願し祖国の土を踏む。育ての親より死刑囚であっても実の父親との対面を求める。これも居場所探しといえないか。
「横綱マドンナ」(イ・ヘヨン、イ・へジュン監督)は歌手マドンナを崇拝する男子高校生が完璧な女性になりたくて手術に必要な資金を稼ぐため韓国相撲大会優勝を目指す。彼にとっては性転換後ではなく練習に励む今の生活が居場所なのかもしれない。
その他、韓国でも一般上映と地方自治体での上映会が行われた「ウリハッキョ〜われらの学校」(キム・ミョンジュン監督)や、パク・ヘイル主演の「極楽島殺人事件」(キム・ハンミン監督)、巨匠イム・グォンテク監督「千年鶴」、韓国初のスポーツドキュメンタリー「飛翔」(イム・ユチョル監督)などバラエティに富んだ編成になっている。
時間とともに居場所も変わる。そんな人生の変遷を映画は見せてくれるだろう。
(アジア映画ウオッチャー・紀平重成)
韓国映画ショーケース2007は12月8日〜14日、シネカノン有楽町1丁目で開催。
「カンナさん大成功です!」は12月15日からシネカノン有楽町1丁目ほかにて全国公開
|