| 韓国政界 大統領発言で紛糾
韓国の西海は北朝鮮との海上境界線だ。「NLL」(西海北方限界線)と呼ばれている。11日、この軍事境界線を盧武鉉は「NLLは南北間で合意した線ではない」と発言した。軍の見解を正面から否定したのだから、大変だ。論争が巻き起こるのも当然で、ハンナラ党や保守系は激しく反発している。(ソウル・李民皓)
親北政策の総仕上げか
11日の青瓦台の記者懇談会で盧武鉉の舌はなめらかだった。
「NLLを領土線と考えている人が多いが、南北間で合意した線ではないという点を認めなければならない。憲法上、北朝鮮の地も私たちの領土なのに、そこに線を引いておいて“領土線”と主張するのは紛らわしい」
盧武鉉はまた「半世期もの間、南北の海上境界線の役割を果たしてきたNLLに対する新しい解釈が必要だ」と主張した。
国防長官・金章洙の見解は違う。首脳会談の後「NLLを守ってきたのは大きな成果だった」と評価した。金章洙は、8月にも「NLLは明らかに海上の境界線だ」と明言している。盧武鉉の発言は、これまでの軍部の見解と姿勢を真っ向から否定するものだった。彼は、北朝鮮と金正日に対しても、再認識せよと言わんばかりにこう述べた。
「北朝鮮に対する認識を、私たちは根本から改める必要がある。(北朝鮮を)打倒することができるのか、私たちが勝利できるのか。(北朝鮮が)醜かろうが美しかろうが、ともに進むべきパートナーなのだ」
盧武鉉は、先の首脳会談で金正日が自分にこう語ったとも言った。
「私たちは核兵器を持つ意思がない、(金日成の)遺訓だ。この意志は確固たるものだ」
それが金日成の遺訓としては信じるのに無理がある。
金日成は90年代中頃、北朝鮮は「韓半島非核化」を主張し、米国の核の傘から韓国を排除することを要求した。遺訓は「米軍の核を韓半島から撤収しろ」と解釈するのが妥当なところだ。
盧武鉉は金正日の言葉を鵜呑みにしたのか。それとも何らかの政治的意図を持って言ったのか。はっきりしていることは、金正日の発言を基に、韓国民に対北認識の再考を促したことだ。
ハンナラ党はショックを隠しきれない。
元大統領・金泳三も怒りを抑えきれない。
「こんな非常識はない。盧大統領は完全に理性を失った。NLLが領土的概念ではないという発言は、発言した当人の精神状態が正常ではないことを物語っている」
91年12月「南北基本合意書」が交わされた時、韓国側交渉担当者だった李東馥(現在、北朝鮮民主化フォーラム代表)は「当時南北が合意した内容は、平和協定を締結するまではNLLにいかなる変更も加えないというものだった」とした上で、「盧大統領のNLL発言は基本合意書に対する無視」と非難した。
青瓦台は「NLLは実質的海洋の境界線という政府の立場に変わりはない」(千皓宣報道官)と事態の鎮静化を図っている。だが、手遅れだ。
盧武鉉は9日、金大中と青瓦台で話し合ったが、金大中以外、前職大統領は呼ばれなかった。韓国の大統領が他国の首脳と会談を行った後は、大統領経験者を呼んで報告と事後相談を行う。韓国の慣例だ。今回は、単なる首脳会談ではなく、南北の首脳会談だったにもかかわらず、金大中以外はすべてオミットする格好となった。実に不自然だった。
2000年の南北首脳会談の際、金大中は呼べるだけの前職大統領を招いて報告を行った。
盧武鉉は首脳会談前に金大中の助言を求めようと思ったが、日程上それができなかったので、会談後に面談したと青瓦台は説明した。納得のいく説明ではなかった。さほど複雑な事情があってのことではないだろう。自分と異なる意見を持つ前職大統領の話は聞きたくなかったというのが、本当のところだろう。
盧武鉉は、前回の大統領選挙2カ月前、当時の大統領金大中と会い、北朝鮮との平和体制について話し合った。その席には、大統領就任直後、北朝鮮に対して5億ドルの不正送金をした事件で逮捕された金大中の最側近、朴智元(当時大統領秘書室長)も同席した。
10年間にわたり、親北朝鮮政権を築いてきた盧大統領と金前大統領が再び意気投合した。旧与党勢力に向けて団結を促そうとするメッセージだったのかもしれない。 |