| 『らぶきょん』累計発行部数100万部突破
映画、ドラマ、ポップソングに続く韓国文化コンテンツは何か。最近、日本語に翻訳した韓国マンガが、日本の書店に並ぶようになった。90年代後半から徐々に、韓国専門書店や一部の大手書店に置かれはじめた。金大中政権以降、韓国政府は、韓国マンガを“MANHWA”(マンファ。「漫画」の韓国語読み)と名付け、支援してきた。“MANGA”とは違うというアピールの意味合いもある。一方、日本のマンガ業界などからは、マンファはまだ日本のレベルに達していないと指摘されている。 (文化部・溝口恭平)
 |
|
|
『らぶきょん』全15巻の日本語訳は、福岡女子学院大学の佐島顕子准教授が担当 |
|
| |
|
『らぶきょん』と呼ばれるマンファがある。『ラブ・イン・キョンボックン(景福宮)』というタイトルを省略したものだ。
主人公の一人で、目のくりっとした少女のイラストが表紙を飾る。片手に携帯電話、もう一方の手に熊のぬいぐるみを抱えている。だが、髪形と服装は韓国王族のそれだ。
『らぶきょん』は、日本で第15巻まで発売され、累計発行部数は100万部(出版元・新書館)を数えた。「韓国の王室が現代も続いていたらどうなっていたか」という設定で物語は描かれている。
「韓国マンガが日本にどれくらい入ってきているのか、正直なところ把握しきれていない」
韓国文化コンテンツ振興院(KOCCA)日本事務所の磯崎太一マーケティングマネジャーは言う。数字を把握できない理由は大きく2つある。マンファの冊数が増えたことと、韓日の企業がKOCCAを介さずにビジネスを展開するケースが増えているからだ。それだけマンファの取引が活発になっているということでもある。
KOCCAが日本に進出したのは2001年。金大中大統領(当時)の「文化大統領宣言」(1998年)を受けてのことだった。
「文化大統領宣言」の翌1999年、デジタルコンテンツの強化に主眼を置いた「文化産業振興基本法」が制定された。IMF危機を教訓に、映画やテレビドラマ、ポップソングやゲームといったコンテンツを国家の収入源にしようとした意図がその根底にある。
マンファ振興策も生まれた。政府は国営のマンファクリエーター養成学校を開設。テレビプログラムの1%以上を国産のオリジナルアニメにするよう、各放送局に要請した。現在、1%を優に超える数のオリジナルアニメが放送されている。
文化産業振興基本法が発表された年、韓国政府は「サイバー・コリア21」という政策を発表し、IT産業のインフラ強化を進めた。インターネットのブロードバンド化などにより、国民は容易に映画や音楽などをダウンロードして楽しめるようになった。九九年以降、韓国のコンテンツ産業は平均成長率20%前後で推移している。
成長を続けるマンファ産業だが、意外にも韓国に週刊のマンファ雑誌はない。月刊のマンファ雑誌が二冊あるだけだ。
マンファ作家志望の韓国人は、作品をインターネット上に公開する。インターネットの普及は、マンファの人気の拡散に寄与した。インターネット上で話題になった作品は、出版社から声がかかり、単行本化されるというシステムだ。
単行本化され、人気が出たマンファのドラマ化や映画化も最近のトレンドだ。前出の『らぶきょん』も「グン(宮)」というドラマになった。「グン」は日本で人気を得た。日本で『らぶきょん』の人気が出たのは、ドラマ「グン」によるところが大きい。
映画とマンファという異なるメディアが相乗効果を上げた一例だ。
一方、マンファのクオリティーに疑問を抱く専門家は少なくない。
前出の磯崎マネジャーは、マンファの翻訳の質に問題があると指摘する。
「マンガは楽しんで読むもの。ところがマンファには日本語ネイティブの訳者が少ないからか、不自然な日本語が目立つ。違和感を覚えた日本人読者が、マンファを敬遠するようになることは考えられる」
翻訳の質に加え、マーケティングも不十分だと磯崎マネジャーは見ている。映画「トンマッコルへようこそ」は、日本にファンタジー映画として紹介された。しかし、ファンタジー映画だと思って見に行った日本人は違和感を覚えた。映画の興行成績は、予想を大きく下回った。このような韓日のずれがマンファにもあることを、磯崎マネジャーは危惧している。
テレビアニメ「それいけ!アンパンマン」の制作に携わる朴禎将さんは、マンファと韓国アニメの普及にはまだ時間が必要だと考えている。
朴さんは「日本はアメリカからアニメの技術を学び、長い年月をかけ“ジャパニメーション”というスタイルを確立した」と言い、マンファにも時間は必要との考えを述べた。
|