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2007年8月15日発行版
 
日本、在日韓国社会−韓国大統領選の及ぼすものは
 

‘07大選
忍び寄る北の影 日本に迫る「韓国親北15年体制」

 仮に「親北朝鮮15年体制」が始まるとしよう。日本と、日本に住む在日韓国・朝鮮人にどのような影響が及ぶのか、という問題は、遅きの感はあるが、提起されるべき時期がきている。韓国の「親北朝鮮15年体制」は朝鮮半島情勢を大きく規定するばかりか、南北朝鮮と中国、さらには中華圏―香港、台湾、シンガポール、マレーシアを巻き込んで、一大日本包囲網を築くことになるかもしれない。(政治部長・朴在宇)

2006年2月4日、北京で開かれた日朝国交正常化交渉。今年2月の6カ国協議で設置された日朝作業部会の原口幸市・日本側交渉担当大使と北朝鮮の宋日昊交渉担当大使も出席した
 
   

孤立深めるか、日本

 韓国の親北朝鮮15年体制は、朝鮮半島における米国の相対的弱化を呼び、半島全域に中国の影響が及ぶことを意味する。
 日本が、対アジア外交で中国に大きく遅れを取っていることは、05年以後、何度も指摘され、報じられてきた。日本は中国市場に深くリンクされた経済事情を抱えている。経済界は警鐘を打ち鳴らし、政治外交の失点を補うことに必死だ。
 だが、日本はアジア外交において、経済面での柔軟さに比して、政治は硬直したままだ。小泉政権時代以来の靖国問題がそれをシンボライズしている。小泉後継政権の座に就いた安倍氏は、首相就任後、外遊先に中国を選び、アジア外交重視をアピールしたが、小手先の「関係修復外交」にすぎなかったことが、早くも露呈している。
 拉致問題での不退転を表明してきた安倍首相は、韓国の親北朝鮮15年体制の始まりとともに、アジア外交の袋小路に追い込まれることになる。拉致問題を唯一、共有しえた韓国との連携が絶たれることになるからだ。さらに言えば、6カ国協議で最も原則的に関わってきたがゆえに、米国ですら米朝正常化に動き出した今、北朝鮮をのぞく5カ国からもオミットされる可能性すら指摘されている。
 北朝鮮外務省は7月19日、備忘録なるものを発表した。拉致問題の進展なしに6カ国協議2月合意のエネルギー支援は行わないとする日本を批判したものだ。
 「日本は6カ国協議すら“拉致問題”の人質に取ろうとしてあがいている」
 国連で日本外交をサポートしてくれた米国の強硬派は、ライス国務長官の一派によって一掃された。6カ国協議に臨む米国はもはや日本の味方ではないことを、日本政府はうすうす感じているはずだ。それでも日本に逆転の手はない。
 これほど重要な問題が存在しているにもかかわらず、日本は07年末の韓国大統領選挙の行方にさほど敏感であるとは言い難い。
 韓国大統領選をシミュレーションした日本の研究機関がある。韓国への配慮からか、匿名を希望したが、この研究機関は、もはや大統領選挙を占うスリルをなくしていた。ハンナラ党が対北朝鮮融和策を発表してからは、どの党が勝つにしろ、少なくとも韓国の対北朝鮮政策に大きな変化は訪れないだろう、という結論を出している。
 早稲田大学の重村智計教授は、「ハンナラ党は日本という味方を失っただけだ」と冷ややかに見ているが、実際には、それほど冷静にしていていいのかどうか。
 康仁徳元韓国統一部長官は、ハンナラ党の変質によって可能性が高まった「親北朝鮮15年体制」で、「日本も対北朝鮮政策の変更を迫られるかもしれない」と指摘する。
 韓国の親北朝鮮政策にほとんどが疑問をおぼえる在日韓国人社会も、影響をうけざるを得ない。在日韓国民団のある消息筋は、「親北朝鮮15年体制となれば、日本国籍に転換する人々が増えるのではないか」と推測している。韓国国内でも、「もしそうなれば海外に移住するしかない」という声が聞かれる。
 だが、10年前、金大中政権が登場するまでは想像もできなかった「親北朝鮮15年体制」は今、不気味なまでに現実性を帯びている。


裏切られた本国貢献

 作用・反作用の法則から、選挙結果は、2代続いた親北政権に対抗するハンナラ党側の勝利とする見方が在日韓国人社会に多い。
 民団直選中央委員、朴昭勝さん(広島)は、「金大中、盧武絃と10年続いた親北政権に韓国社会がノーと言っている。結果は重要な意味を持つ」と指摘している。
 昨年、在日韓国人社会は「5・17事態」を体験した。金正日―金大中・盧武鉉が行おうとしている「連邦制」の「シミュレーション」といわれた「民団・総連和解」の引き起こした混乱だった。在日韓国人社会の関心は、選挙結果が「第2の5・17」を招かないかという点にある。
 首都圏民団のある支団長は話す。「ハンナラが執権すれば、6・15南北共同行事(2000年6月の金正日―金大中会談に基づく南北交流)など北朝鮮と総連の統一戦線工作は抑えられる。民団に“6・15”体制の圧力はかからない」
 反対の見方もある。
 「与党系・野党系いずれが執権しても、新政権は“6・15”を容認し、在日韓国人社会にその圧力は強まる」民団直選中央委員、安秉元さん(東京)の見解だ。
 「われわれが60年間、民団を通して行ってきた本国への貢献は何であったかが問われる。とくに親北政権になれば、大使館と民団中央から下ろされる方針に民団社会はついていかなくなるだろう」
 場合によっては、民団社会は真っ二つになり、団員の民団離れが起きることさえあるというのだ。
 現実問題は補助金にある。今年から民団中央は実質、補助金の2割をカットされた。公館経由で地方本部に直接配分した。その影響が出ている。今まで行っていた予算の大枠が組めなくなり、「同胞生活センター、青年ジャンボリーなど次世代育成部門に思い切って予算を振り向けることができなくなった」という。こうした補助金執行は次期政府のもとでも継続するのか注視されている。
 「ないと困るが、10億円のためにモノが言えない。自立を先に考えよ」(民団地方本部顧問)
 民団周辺の親北勢力に関しても影響は確実だ。結果は彼らを勢いづけると3氏は言う。
 朴昭勝「ウリ党系・民主労働党系が政権を取れば、日本のなかで親北グループの力が大きくなる可能性がある。それが怖い」
 K支団長「韓統連は『自分たちも韓国民だ』と言う。それなのに分派行動を取る。好ましくない」
 安秉元「主義主張はあっていい。ただし他のゾーンに入っては困る。5・17事態は親北勢力に対する民団の拒絶反応だった。彼らはふるいにかけるしかない」
 総連は5月の21全大会で「民族圏委員会」を新設し、同胞再発掘運動に乗り出した。3氏は選挙結果を受け、総連は民団への働きかけを活発化させるだろうと口をそろえる。
 「北には手足として便利な組織だ。総連に対して北のできないことを親北政権に要求することが怖い」というのは朴昭勝さんの言葉だ。
 安秉元さんは、「われわれは60年間、韓国の国是を遵守してきた。4500万の韓国国民が国是を変え、生きていくならそれもよい。われわれとしては今まで通りの自由民主主義、開放体制の韓国であってほしい」と願っている。
 「民団は生活者団体で団員のための利益団体だ。創団時の60年前の宣言・綱領は今も通用する立派なものだと思っている。民団の性格は将来にわたって堅持されるべきだ」
 という、朴昭勝さんの言葉は民団員共通の思いのはずなのだが……。
(社会部長・金総宰)

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