| 韓国人拉致背景にタリバンの復活
「外国勢力」を標的にせよ
アフガニスタンで韓国人23人が拉致された事件は、7月25日、「炯奎(42)牧師が殺害されたことで、それまでの楽観的ムードは一変した。米軍主体の多国籍軍は翌26日、タリバンの拠点に集中攻撃を行った。人質救出にむけたタリバンへの圧力とみられる。韓国人拉致問題の交渉をめぐっては、タリバン内部で意見が対立しているという情報もある。未確認情報は多く飛び交っているが、交渉の見通しはついていない。タリバンは2001年、崩壊したと見られていたが、復活しつつある。(崔世一)
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タリバンはパキスタンを拠点に力を蓄え勢力を盛り返しつつある=AP・聨合ニュース
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信頼失うカルザイ政権
タリバン復活を思わせる事件があったのは2月27日。アフガニスタンのバグラム米空軍基地を訪問中だったディック・チェイニー米副大統領を狙う自爆テロが起きた。事件で韓国兵1人を含む23人が死亡した。タリバンは米軍の主要拠点に攻撃を仕掛けたことになる。
現状で言えば、タリバンの政権奪還はあり得ない。カルザイ政権はカブールで多国籍軍に守られている。
カルザイ政権はしかし、タリバンによるテロ活動で、国民の信頼を失おうとしている。国民は公然と役人の汚職や権力の乱用、不正についても不満を口にするようになった。
タリバンは昨年、3000人以上の兵士を失ったが、結束は強まっていると言われ、新たに兵士を補充しているとも言われる。
行方を絶っていた最高指導者オマル師は、今年初め声明を出した。アフガニスタン人はイスラムの教えの下で、「侵略者」と戦う義務があると主張し、「外国勢力」を標的するよう指示していた。
多発する外国人拉致
今年に入ってから外国勢力を標的にする事件が相次いでいる。3月にイタリア人記者を拉致。4月には教育支援のフランス人男女を連れ去った。7月18日にはドイツ人男性技師2人を拉致、うち1人は遺体で見つかった。
ロイター通信のまとめによると、アフガンで外国人が人質となった事件は2003年以降、15件発生している。そのうち、タリバンによって人質が殺害されたのは、今回の事件を含め7件だ。
タリバンは「外国人拉致」による“成果”に確かな手応えを感じているはずだ。今年3月、拉致したイタリア人記者と引き換えにアフガン当局に拘束されていたタリバン幹部5人の釈放に成功した。タリバンは拉致した外国人と引き換えに、アフガン当局に拘束されているタリバンメンバーの釈放や、アフガンに駐留する外国軍撤退を要求する戦術の有効性を確認したのかもしれない。
イタリア人記者と引き換えに保釈されたタリバン軍事幹部の一人、マンスール・ダドゥラ司令官は「外国人を誘拐し、取引するよう命じた」と、英民放テレビのインタビュー(7月25日)で語っている。
タリバンはパシュトゥーン人を中心とする、イスラム教原理主義者の武装集団。「タリバン」とは、「神学生」の意味。ソ連による侵攻や内戦による混乱期、1994年にカンダハルで結成されたといわれる。96年には首都カブールを制圧し、政権を手中に収めた。最盛期にはアフガニスタンの90%の土地を占めた。極端なイスラム原理主義を政策に取り入れ、公開処刑を頻繁に行うなど、恐怖政治を行った。2001年、米国の侵攻で政権の座を追われたが、現在も各地でゲリラ的な抵抗を行っている。
韓国内に衝撃と当惑
韓国人ボランティア23人が拉致されたのは、7月19日。
韓国政府の対応は早かったと言える。拉致直後の20日には、政府の対策本部を設置。21日には盧大統領が人質の安全と解放を訴えるメッセージを出した。22日には政府対策チームが現地入りした。
当初、タリバンの要求は「韓国軍の撤退」と伝えられた。アフガンに駐留している韓国軍は、医療部隊と工兵部隊約210人の非戦闘員だ。事件前にすでに年内の撤退を決めていた。盧大統領も21日の会見で年内撤退を再確認している。人質解放への交渉は順調に進むかに見えた。
拉致された23人のうち、18人が女性だったことも事件解決がスムーズに行われるのではないかという、楽観ムードが生まれていた。これまでタリバンは女性を殺害した例がなかった。
状況は一変した。2度にわたる交渉期限延長の末、ボランティアグループを引率した「炯奎牧師が殺害された。韓国内では「戦闘兵を派兵して仕返ししよう」という反応まで表れた。
国外派兵に反対してきた市民団体は、連日記者会見と集会を開き、「アフガンからの即時撤兵」を主張している。彼らは、今回の拉致事件の責任は、アフガニスタンに派兵した韓国政府にあると指摘している。
ボランティアの安易な渡航、活動への批判は起こっている。「韓国世界宣教協議会」によると年間約1万4000人が海外ボランティア活動に参加しており、今後はこうした活動のあり方自体も議論の対象となりそうだ。
アフガンには現在、NGO関係者ら約200人の韓国人が滞在中とされる。韓国政府は、アフガンを旅行禁止国に指定、早期出国を促している。
アフガニスタンに入れない
韓国マスコミ 頼りは外信報道
錯綜する情報 手間どる確認
アフガニスタンで、23人の韓国人が拉致され、韓国政府との交渉如何では“処刑”される危険が続いている。アフガニスタンは今、世界のマスコミの注視の中にある。
首都カブールにマスコミ各社の支局はほとんどないが、各社はこぞって特派員を送っている。
ところが、事件の当事国である韓国メディアが、一社もアフガニスタンの現地に姿を現せずにいる。
韓国政府が同国を「旅行禁止国」に指定したからだ。従ってアフガニスタン当局は21日、韓国人に対するビザ発給を中止した。
国営放送局KBSの取材陣でさえアフガニスタンには入国できず、UAEの首都ドバイに留まっている。
直接取材ができない韓国メディアは、外信報道に頼らざるを得ない。情報源は主に3つ。カタールの衛星放送「アルジャジーラ」、パキスタンの通信社「アフガン・イスラミック・プレス」(AIP)、そしてAP・AFP・ロイターなど、欧米系の通信社だ。共同通信やNHKなどの日系メディアも重要な情報源となっている。韓国メディアは、事実関係の確認に時間がかかっている。
25日夜から26日朝までの約六時間、笑えないハプニングが起こった。25日午後9時頃、韓国のTV局は一斉に「人質8人解放」と「男性1人殺害」を報じた。AP通信の報道を引用し、「米軍基地に女性6人と男性2人が安全に到着した」と、断定的に報じるメディアが続出した。
韓国政府は26日朝、公式に事実関係を伝えた。テレビでは「誤報」を詫びる放送が、新聞では謝罪訂正文が並んだ。ソースがないというより、ソースの選択に問題があるのかもしれない。この際、たとえば、日本のメディアが外国人フリーランサーと契約を結び、外地からの報道を委ねるようなやり方を、韓国マスコミもそろそろ覚えたほうがいいことを、事件は一方で教えている。
(ソウル・李清照) |