| ソウルで2つの日本映画祭 好評で期間延長も
日本の最新情報に敏感な韓国のファン
先月末から8月はじめにかけてソウルへ行って来た。
韓国映画は今年前半、ハリウッド映画に押されっぱなしでいい所がなかったが、ちょうど滞在中に光州事件を描いた「華麗なる休暇」が爆発的にヒットし始め、特撮を駆使した「D―WAR」もこれに続き、にわかに勢いを取り戻したかのようである。
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スポンジハウスで開催された日本映画祭のパンフレット |
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その韓国で今新しい胎動が始まっている。「日流」と呼ぶにはまだ力は弱いが、日本映画を見る観客層が着実に広がっている。それを象徴するのが昨年に続いてソウルのインディーズ専門館「スポンジハウス」で開催している日本映画祭の充実ぶりと、11月に同じソウルのシネコン「シナス イス」で新たに始まる日本映画祭だ。同じ年にソウルで2つの日本映画祭が開かれることなど、1965年から輸入禁止が緩み始める98年まで日本映画が上映すらされなかった韓国では想像もできなかったことだ。なぜそうなったか。
日本の文化庁を始めとする日韓双方の公式レベルでの働きかけも大きかったろう。2004年に文化庁が日本の娯楽映画46本を上映したことは、規模の上でも内容の点でも間違いなく今日の日本映画ファンを産み育てたといえるのではないか。
一方、日本映画を求めるファンの側にも理由はあったろう。スポンジハウスの事例を見てみよう。同館は海外の芸術映画を配給するスポンジが初の直営館として昨年7月ソウルの鍾路、シネコアビルにオープンした。スポンジのジョン・ヒョンソルさんが説明する。「正式の公開には無理があるとしても韓国映画にはない魅力を持った作品を紹介することで日本映画のよさをより多くの人に知ってもらうことを目指しています」
日本映画の公開は年10本を目指しているが、映画祭では昨年が2週間で10本、今年は1カ月で12本を上映。大変好評で要望も多いため、期間を延長して人気作品の上映をさらに1カ月近く続けている。
人気の上位六作品をあげると(1)「鉄コン筋クリート」(マイケル・アリアス監督)(2)「イン・ザ・プール」(三木聡監督)(3)「ストロベリーショートケイクス」(矢崎仁司監督)(4)「木更津キャッツアイ」(「日本」「ワールド」各シリーズ、金子文紀監督)(5)「かもめ食堂」(荻上直子監督)(6)「笑う大天使(ミカエル)」(小田一生監督)。
「鉄コン筋クリート」は原作漫画(松本大洋)の人気とスターによる声優の魅力で、また「イン・ザ・プール」は原作小説(奥田英朗)と主演のオダギリジョーの人気で多数の観客が詰めかけたという。ジョンさんは「最初は人気の原作とスターの出てくる映画にファンが集まりましたが、段々と『かもめ食堂』のように作品自体が評価されて観客が増える傾向にあります」という。
興味深いのは日本での公開とあまりタイムラグがないこと。平均すると日本公開から1年以内だ。映画祭なので常にホットな作品が選ばれやすい。それでも4月に日本で公開されたばかりの二宮和也主演「黄色い涙」(犬童一心監督)が公開中で、日本の最新情報に敏感であることがうかがえる。
「シナス イス」の方はどうか。こちらは韓国史上初めての日本のピンク映画祭だ。企画担当のジュヒさんに訳を聞くとすごく真面目な答えが返ってきた。
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シネコアビル |
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「韓国での日本映画は海外の映画祭で評価された作品や作家主義の作品に偏って紹介されているのではないでしょうか。日本の大衆文化を理解するには、大衆映画に接してこそより親密に理解できます。まさにピンク映画がそれで、たんなるセックス映画という側面だけでは語り切れない人間に対する深い洞察と社会批判を含んでいて、作品としてのクオリティーも高いのです」
映画祭は女性限定だ。時代と文化を常に先取りし反映してきた映画というメディアを通じ、女性の性意識や環境がどう変化してきたかを見て、主体的に性を探求してほしいという。
作品は現在選定中で、「かえるのうた」「たまもの」(いまおかしんじ監督)や「ピンクリボン」(藤井謙二郎監督)など10本程度を予定している。
日本映画は、最初は物珍しさや渇望感から、あるいはスター人気で見られ始めたのだろう。それが次第に幅を広げ、さまざまな角度から受容しようとする層を着実に増やしていることが分かる。それが2つの日本映画祭を成り立たせる背景なのだろう。
東京・渋谷のイメージフォーラムでも31日まで「韓国インディペンデント映画2007」を開催中だ。シネマコリア(東京、名古屋に続き大阪で9月1、2日)、韓流シネマ・フェスティバル(10月12日まで)と合わせ日本における韓国映画の見られ方も多様化している。日韓の文化交流のさらなる深まりを期待したい。
(アジア映画ウオッチャー・紀平重成)
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