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2007年7月11日発行版
 
通信士の食材  「信使通覚書朝鮮人好物の写」3
鄭大聲
 
 

センマイ 牛の内臓のサシミ

 「百葉」の言葉が見られる。センマイのことである。韓国では、千葉(チョニョブ)と呼ぶのが一般的だが、この頃には百葉と呼んでいたことが資料で分かる。中国ではセンマイのことを百葉と表記する。

   

 資料はこの百葉のセンマイを焼肉に次ぐ好物として取り上げている。
 「右は牛の臓腑だ。朝鮮の人賞味の物。胃に黒い簾毛のような物がある。これを剥いで白いところを取って千切りにする。皿に盛り合わせて、辛子酢をちょく(小皿)に入れて付けること。あるいは百葉を千切りに粕和えにして、酢を少し加味し、生姜、にんにくをきざんでまぜ合わせて、すすめる」
 この記述は、いまの千葉膾フェのことである。内臓を生で膾にして食べることが、朝鮮の上層階級つまり官僚の世界で一般化しており、好物料理であったことがうかがい知れる。レバーの肝も生食にできるのだが、資料には取り上げられてない。牛の料理で膾になっているのは、この部位だけである。
 調味には辛い味と酢の味を合わせるのは、現在と全く同じであるが、「辛子」とはトウガラシのことではない。辛子菜の種子をつぶしたいわゆるマスタードのことである。この時代未だトウガラシは朝鮮で一般に至ってないし、まして日本には辛いトウガラシは普及していない。
 食べる方法として面白いのは、千切りにしたものを「粕和え」にしていることだ。酒粕に和えることで肉が軟らかくなる。酢を少し加えて生姜、にんにくのきざんだものを合わせるというのは、いまのチョコチュジャン(酢みそトウガラシ)を用いるのと全く同じである。
 なお百葉を指すとき、千葉のセンマイの上の部位の「ハチノス」を一緒にすることも多いという。牛の胃は4つあり、第1がミノ、第2がハチノス、第3がセンマイ、第4がアカセンマイ(関東ではギアラ)と呼ばれている。
 (チョン・デソン=滋賀県立大学名誉教授)

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