「信使通筋覚書朝鮮人好物の写」2 骨付きカルビ
「信使通筋覚書朝鮮人好物の写」の「獣肉」の項目にある「肋」(アバラ)の件ではこうある(口語訳)。
「朝鮮ではカルビといって賞味する物。肋骨に付いた肉に5分(1.5センチ)の切れ目を入れ、それを長さ3寸(約10センチ)に切る。油(ゴマ油)、醤油でよく炙る(焼く)。肋骨の胃の方(内側)には肉は付けず、肉の付いている方に五分の切れ目を入れよく炙ること。ゆでてもよし。大人小人(大人は通信使上官、小人は下官)によらず賞味する。膳部に不用。酒の肴に出せば百味もこれに及ばず」
焼肉の骨付きカルビの料理法である。ずばり「カルビ」という語が使われているのは驚きだ。料理法も基本的にいまの骨付きカルビと変わっていない。肉の長さ、肋骨についた肉に切れ目を入れること、調味に油と醤油を使うことがそれである。
当時朝鮮の宮廷料理の骨付きカルビ料理法(「朝鮮時代調理書の分析的研究」李盛雨、1982年)には次のように記されている。
「骨付きのものを7センチほどに切る。熱湯で軽くゆで、肉を軟らかくする。1センチずつ切れ目を入れる。ゴマ油、醤油、ねぎ、にんにく、胡椒、砂糖、梨のしぼり汁でたれをつくる。これを骨付きカルビによくまぶして蒸す。蒸し上がったものに、もう一度たれをつけてから焼く」
かなり手間をかけた料理法である。当時の牛は役牛で肉が今より硬かった。宮廷料理で食べやすくしているのが特徴である。
一般の骨付きカルビの料理法を文献でみるとメス牛の肋を利用しているが、肉が軟らかいからとみてよい。たれに肉をねかしているのもそのためだろう。
「ゆでてもよし」とあるのは、「カルビチム」という料理法を指している。「チム」とは「蒸す」の意である。
「膳部に不用」とあるのはご飯のおかずにはしないという意味であり、酒の肴に出せば百味もこれに及ばずとあるのは、カルビという部位が、いかに美味なものとしてとらえているかを語っている。
(滋賀県立大学名誉教授=チョン・デソン)
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