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2007年6月6日発行版
 
歓迎したい安倍首相の姿勢
 
 

 青森県深浦町の港にたどり着いた4人は、「一日おきにパンを食べるのがやっとだった。生活が苦しくて北朝鮮を脱出した」と話している。青森県警などは一応、入管法違反の疑いで調べているが、警察も政府も「脱北者」であることは間違いないと認めた。
 「韓国との国境が厳しいのを見て日本を目指した」
 警察の調べで明らかになった彼らの事情から推し量れるのは、脱北者が直接韓国を目指すのが難しくなっているということだ。
 中国との国境を目指す人々も、北朝鮮側の監視強化と中国側の取締強化で、脱北は次第に困難になっているといわれる。国境警備員や中国公安などにワイロを渡すことが常套手段となり、これがうまくいき、無事中国に入ることができても脱北者たちは延辺朝鮮族自治州とその周辺で立ち往生してしまう例が増えている。東北地域での潜伏を余儀なくされている人々は10万人を超えているだろうと、延辺朝鮮族の人々は見ている。
 中国でカネを貯え、内モンゴルなどを経由し、東南アジアから韓国へ向かう大迂回ルートを使う人々もいる。だが、中国当局は最近このルートを遮断しはじめた。その分、漢族と朝鮮族の脱北ブローカーたちの要求する「脱北経費」はかさむ一方だといわれている。
 脱北者が深浦港にたどりついた今回のようなケースは今後増えていくのではないかと、日本側が懸念しているのはそうした事情を背景としている。
 日本は「北朝鮮人権対処法」(北朝鮮人権法)をすでに施行している。従来のいわゆる「難民法」では飢餓などによる経済難民は規定外となり難民認定できない状況であったため、日本政府は特例法として「北朝鮮人権法」を定めた。
 日本の警察当局は4人について、「偽装脱北」かどうかについて取り調べていると言われる。天候がよかったとはいえ、あんな小さな船でどうやって来ることができたのか? 母船は本当になかったのか? などと疑いを捨てきれずにいるからだ。
 だが、そうした疑いが晴れた場合、脱北者の保護を謳った「北朝鮮人権法」の施行後初の適用事例となる。偽装脱北か否かの詮議を行うにしても、一方で人権法適用を進めていく作業を日本政府は早急に行わなければならない。
 日本政府は北朝鮮側から4人の引き渡しを要求された場合のことを考慮しているといわれる。にべに拒絶できない理由があると外交筋で囁かれており、その理由として、日本は北朝鮮にいる辛光洙ら日本人拉致犯に対する引き渡しを北朝鮮側に要求しているからだといわれている。
 だが、北朝鮮との間に犯人引き渡し条約などの司法共助協定がないとはいえ、日本人拉致という国家犯罪の実行犯と、脱北者を同一線上におくという発想自体が間違っていると言わざるを得ない。それは人権法の精神から大きく外れるだろうし、もし、4人の処遇をためらえば国際世論の批判を浴びことになるだろう。
 安倍首相は3日、「日本は人権を守る国である」と改めて表明し、4人を亡命者として受け入れる姿勢を示した。参院選を前にした政治パフォーマンスだと穿った見方をするメディアもあるが、日本の有権者は「年金問題」以上に脱北者問題に関心を払っているようには思えない。
 安倍首相の姿勢は人権尊重国日本の姿勢を世界に示したと言える。このことは拉致問題においても、国際社会に強いメッセージを送ることになるだろう。
 4人は韓国行きを望んでいるといわれるが、脱北者たちは今後、韓国を希望するにしてもとりあえず、日本を目指すだろうし、今回のケースを契機として本当の「飢餓難民」が日本に押し寄せるかもしれない。試されるのは「北朝鮮人権法」であり、日本の人権思想の真価だ。安倍政権の健闘を期待したい。

 
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