統一日報 ログインはこちら
ホームNEWS情報NETWORKデータベース
トピックス政治経済社説社会文化特集
2007年5月2日発行版
 
偉大なジャーナリストの死
 
 

 私たちは同時代を生きる偉大なジャーナリストを失った。
 デイヴィッド・ハルバースタムは4月23日、カリフォルニア州のメンロークパークで交通事故に遭い亡くなった。73歳だった。
 人間の誤りと、強者の奢りと、政治の不明を書き続けたハルバースタムの著書は、日本で翻訳紹介されただけでも20冊近くに及んでいる。
 英知を集めたアメリカのエリートたちが、栄光と興奮に憑かれ、ベトナムの泥沼にはまりこんでいく姿を描いた『ベスト&ブライテスト』、世界の自動車市場を制覇したはずの米国ビッグ3が、ドイツと日本のクルマに足をすくわれたのはなぜか?と問いかけた『覇者の驕り』、新聞が、テレビという新興メディアにジャーナリズムの第一席を譲り渡したことに憤りと疑問を投げかけた『メディアの権力』などである。
 ニューヨーク・タイムズ記者の時代、ベトナム報道でピューリッツァー賞を受賞したが、その後、フリーとなって発表したこれらの作品のほうが、ニュー・ジャーナリズムの本領を発揮した。組織記者であることの、まさしく驕りと不明をぬぐい去ったとき、彼の真面目が立ち現れたと言っていい。


ドラマチックな編み出し

 ハルバースタムの作風は、たとえば、同じピューリッツァー作家で一世を風靡したワシントン・ポストのボブ・ウッドワードや、イギリスのジャーナリスト、ゴードン・トーマスたちとは対照をなした。ウッドワードやトーマスが、事件を対象化して証言を積み重ねるなかで事実を引きだそうとしたことに対し、ハルバースタムは、人間が事件を生むという確信の下で、ドラマチックなストーリーを編み出した。
 「あの頃、私は…ミシシッピー州ジャクソンのバス停留所に何度となく立った。だからか数多くの黒人一家が、ありったけの家財を手に北部へと旅立つ姿を見かけていたし、その光景は今でもはっきりと目に焼き付いている。明らかに『北部への大移動』が起こっていた。ところがその動きを目にしながら、私は何も見ていなかった」(『ザ・フィフティーズ』金子宣子訳、新潮社)
 ハルバースタムが、傍らを通り過ぎていった出来事の歴史的重要性に気づかされるのは、12年後、マーティン・ルーサー・キングの記事を書いているときだった。
 重大な歴史的動きは、いつも、どの時代も私たちの傍らを通り過ぎてゆく。人々は気づかぬものだ。気づくべきはジャーナリズムにあり、気づかせるべき相手は政治だ。そのジャーナリズムにも驕りがある。それらのことを、身をもって気づかせてくれたのがハルバースタムだった。


メディアの驕り気づかせ

 巨大メディアと権力との関係をえぐり出した『メディアの権力』で彼は、テレビの進出によって調査報道が衰退する状況に警鐘を鳴らした。日本のメディアが、いざというとき取材対象から遠ざかる姿を喝破したのもこのときだった。彼の目には日本や韓国のいう「ジャーナリズム」は「報道保護主義」と映った。いわゆる「クラブ制度」などは最たるものだろう。私たち弱小メディアは拍手を送るが、巨大メディアは耳が痛かったはずだ。
 ハルバースタムをジャーナリズムへと接近させた契機はベトナムだった。米国人はもちろんのこと、日本人も韓国人も尊敬してやまないJ・F・ケネディは彼の記事に激怒し、ニューヨーク・タイムズ経営者に配置換えを求めたという。その後に彼はフリーの道を求めた。
 統一日報は、新聞が死に体となるときは、権力から愛されるか、無視されるときだと考える。ハルバースタムは権力に嫌われたが、権力を怯えさせた数少ない作家であり、ジャーナリストだった。冥福を祈りたい。

 
当社は特定宗教団体とは一切関係ありません
Copyright 2008 onekoreanews.net All Right Reserved.
会社案内  個人情報  著作権  お問合せ