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2007年4月25日発行版
 
「犯人はサウスコリアン」
 

「米国永住権者の犯罪」で幕か
政府 マスコミ 国民こぞって哀悼
 

 バージニア工科大銃乱射事件が発生した直後、犯人は中国系といううわさが広まった。韓国市民は、一度は安堵したが、暗転、米捜査当局は「犯人はサウスコリアン」と発表した。

亡くなった32人のためにバージニア工科大学で行われた追悼式
 
   

 政府は神経を尖らせた。マスコミは事件報道で一色となった。
 教会や寺院は自発的に犠牲者の慰霊式を行った。ある市民団体は、街頭でキャンドル追悼集会を開いた。盧武鉉大統領は3回も哀悼の意を表明した。
 韓国政府に弔問使節団派遣を提案した者もいた。
 バージニア工科大銃乱射事件は国民全体の関心事となっている。
 外国で起こった事件に、ここまで政府と民

間が同じ反応を同時に見せるのは異例と言っていい。
 韓国の哀悼ムードは、事件発生後数日が過ぎ、落ち着きを取り戻している。「犯罪と国籍は別」という認識が出はじめた。
 韓国人が起こした犯罪だが、原因は米国社会の構造的問題にある。韓国人が罪の意識と自責の念に駆られるのは「ナンセンス」「オーバー」という指摘が現れ始めている。
 米国人とともに暮らす在米韓国人社会も落ち着いた論調が出はじめた。
 「趙承熙君は韓国の価値観を教わる機会を持てなかった。コミュニケーションがとれないという孤独感の中、映画とテレビゲームで暴力が英雄視される米国の退廃的文化に接した。事件の原因は米国文化であり、犯人が韓国籍だったのは偶然にすぎない」(在米韓国人新聞USニュース)
 事態を沈静化させようとしたのか、韓国政府はまるで趙承熙とその家族が韓国国民であることを恥じるように、その事実を隠そうとするような発言を行った。
 「法的に国籍は韓国だが、米国に永く住み、米国人と変わらない」と、しきりに「米国永住権者」であることを強調した。
 20日午後、外交部庁舍で開かれた外交部幹部たちとソウル外信記者団(SFCC)との即席懇談会でもその傾向は見受けられた。
 公館は趙一家の状態を把握しているのか。
 「駐米大使館がインタビューを申し込んだが、家族は遠慮した。息子の犯罪に大きな衝撃を受け、パニックに陥ったようだ。FBIに保護されていて、具体的な現状はよく分からない」
 犯人は1・5世の韓国国民だ。公館は彼らに今後、カウンセリングのようなサポートプログラムを行うのか。
 「韓国国民ではあるが、永住権を持ち、事実上米国人と変わらない。米国の短期滞留者の管理も困難なのに、永住権者の教育とカウンセリングまですることは不可能なのではないだろうか。在米同胞の中には、公館で在外国民登録をしない者も多い。身元の把握はすぐできるわけではなく、今回もそうだった。米国社会は英語ができなくても拒否感なく社会構成員として認める雰囲気なのに、どうして事件を起こしたのか、理解できない」
今回の事件に対する韓米の対応を見てどう思うか。
 「米国社会の対応が落ち着いていることに驚いた。犯行の経緯と焦点を社会的問題として捉えようとしている。私たちの考えとこうも違うとは思わなかった。韓国での反応の方が激しかった」
 韓国人留学生は、米国にいる外国人留学生で最多の9万4000人といわれるが、1・5世も含まれるのか。また、その数は把握できているか。
 「9万4000人は米国の留学ビザ(F1)を持つ学生で、趙承熙のような1・5世の学生は含まれていない。米国に1・5世が何人なのかも分からない。調査したことはないと聞いている」

1.5世のアイデンティティ・クライシス
韓国語を忘れた子供  親との断絶 精神的葛藤

 カナダに移民して7年になる趙ソクジンさんは、趙承煕の事件と、彼の家族について強い関心を持ち、韓国のインターネット媒体に文章を寄せた。それによれば、趙さんの息子も趙承煕のように無口で「のどに異常があるのではないか」と周囲から言われた。息子は孤独だったという。
 「趙承煕はおそらく韓国語もハングルも忘れたのだろう。だとしたら親とコミュニケーションは絶たれたはずだ。子供が学校で問題を起こしても、すぐ対処できない。子供は親の韓国語を理解できず、1世の親は子供の米国的な問題行為を理解することができない」
 海外移民1世がほぼ共通して抱える悩みだ。子供たちがもし、問題行為に走るとして、それは、韓国人の特異な教育文化、上昇志向型に起因するのか。
 移民した韓国人は、子どもに好きな大学に進学させることを「成功の近道」と信じ、子どもの成功で自身も満足感を得ようとする。だが、親の過度な期待は、1・5世の子どもにはストレスとなる。
 趙承煕の親もこのケースに当てはまったかもしれないのだ。在米韓国人によると、米国のクリーニング店は1日に12時間以上営業する。趙一家が無一文に近い状況から中産階級の家庭を持つまでには、どれほど血のにじむ努力を払ったか、想像に難くない。
 こうした環境の下で、趙承煕は悩みを解決する手立てを探し出せなかったのか。精神的に問題のあった青年の起こした事件と、単純に決めてしまう前に、留保すべき事柄はなかったとは言えない。
 韓国で生まれ、韓国語をしか話せず、突然、米国に移民せねばならなかった1・5世。“アイデンティティー・クライシス”が彼らを襲ったとしても不思議はない。韓国籍のまま、学生ビザで語学研修や大学留学に行くグループや、米国で生まれた2歳、3歳とは違う環境にある。
 趙承煕がバージニア工科大英文科に入学した時、ある教授から名前を書きなさいと指示された。趙承煕は「クエスチョンマーク」を書いて提出した。
 趙承煕は「私は何者か」と自問し、「私も分からない」と言いたかったのかもしれない。
 バージニア工科大の惨劇と、ある移民家族の悲劇は、1・5世の悲しい自画像が現実となって現れたと解釈することもできなくはない。


韓国社会に走る衝撃
乱れ飛ぶ情報  過剰な反応

 趙承熙が起こした「バージニア工科大学銃乱射事件」は、韓国社会にも大きな衝撃をもたらした。
 犯人が韓国人であることがわかると、インターネット・サイトは、問題に関する報道や、書き込みで埋め尽くされた。
 米国在住の韓国人が被害にあう可能性もあると、現地の韓国人の話を引用しながら伝える記事もあった。犯人がわかった直後、犯行の動機や犯人の家庭環境で未確認情報が飛び交う場面も見られた。

ソウル市庁前で行われた追悼式
 
   

 事件後、犠牲者の追悼集会が各地で行われた。事件の現場となったバージニア工科大学をはじめ、現場近くの韓国人教会や、カリフォルニアの韓国人コミュニティーでも追悼集会が開かれた。ソウルの寺院でも追悼の祈りがささげられた。
 韓国政府の対応は早かった。事件の犯人が趙承熙とわかった直後、弔問使節団派遣を米国側に打診した。李泰植駐米韓国大使は、32人の犠牲者に合わせて、32日間の断食を提案した。
 これに対し、一部の韓国メディアは、犯人が韓国人だったからといって、過剰に反応しなくてもよいと、外国の報道を引用して伝えている。
 韓国・中央日報は、米国国務省韓国担当者の言葉を引用し、事件は韓国系の学生が起こしたものだが、米国は国内問題として扱っていると指摘。
 「各民族同士で排他的な集団を作れば、社会・国民の統合に障害となる場合もある。母国が出てくることにより、そういう傾向が生じる」と、政府や李大使の過剰反応ぶりを指摘した。
 一方で、韓国では米国の銃社会問題に対する論調はあまり聞こえてこない。事件を起こしたのが韓国系の学生だったという点に、焦点が当てられているようだ。
 日本に留学中のある韓国人留学生は「韓国メディアは初期の報道で、趙承熙が八歳で米国に渡ったことを強調し、韓国人であることを遠ざけて報じているような感じがして不快だった」と語った。
 米国メディアは、精神的な問題を抱えた一人の青年の犯行であるという点に重点を置いている。
 日本では、同時期に起きた国内の事件もあってか、米国の銃社会を非難する報道が目立つ。
 趙承熙の起こした事件は、思わぬ形で韓国社会の行き過ぎた「同胞意識」をあぶりだしたようだ。

「犯人はサウスコリアン」
 1945年に始まった冷戦体制を勝利に導いた米国は、力関係で最大限優位に立つことで、平和を勝ち取った。
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