| 年内批准は不透明 「票」「支持者」にらみ 政治家動かず
韓米自由貿易協定(FTA)交渉は妥結した。だが、実際発効するまでには、難問が山積している。韓米両国は、妥結した交渉内容を自国の議会に提出する。両国の前例や国内事情を考えると、条約の批准までには1年以上かかるという見方が支配的だ。(ソウル支社・李民皓)
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金鉉宗通商交渉本部長(右)とカラン・バティアUSTR副代表 |
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発効まで予断許さず
最大の難関は国会通過だ。韓国は、今年12月に大統領選挙を、来年4月に国会議員選挙を、それぞれ控えている。
ウリ党の大統領候補に名が上がっている金槿泰前議長や千正培議員は「FTA反対」を明言している。与野党を問わず、反対意見が優勢だ。
ハンナラ党の大統領候補、李明博氏と朴槿恵氏はFTAへの賛成を表明しているが、積極的な働きかけは見せていない。「票にならない」という政治家としての打算が働いているようだ。
期限がないという点も、政治家たちが積極的な動きを見せない理由だろう。韓国政治は「票」や「支持者の機嫌取り」を優先させる傾向がある。
国会は以前、チリとのFTA締結の際、農業団体からの激しい反対運動にあい、最終的な条約発効まで1年6カ月も要した。そのため国会での批准は、来年5月末以後に処理されると見られる。
韓国側の今後の日程は、次のとおりだ。
6月末までに韓米FTAに両国首脳か通産長官が署名した場合、韓国政府は国会に批准同意案を提出する。9月には定期国会で批准要請が行われる。国会の統一外交通商委員会で議論し、法制司法委員会を経ず、そのまま本会議に上程される。
締結まで米議会も難航か
大統領が交渉権を持っている韓国と違い、米国は議会が交渉権を持っている。通常は議会が90日間交渉内容を審議して、修正・補完過程を経て同意案を処理する。ブッシュ政権は、議会から貿易促進権限法により、交渉権の委任を受けている。行使期限は7月1日までだ。この日までに両国FTA協定は締結されなければならない。
問題はその後の議会審議で、交渉内容が修正・補完されるかどうかだ。
韓米両政府は、協定文の句読点一つ一つまで文案を作っては直す。これはもう一つの「交渉」だ。
議会での検討が終われば、韓米両国大統領か通産長官が協定文書に署名し、米国政府は履行法案を議会に提出することになる。履行法案は、提出後60日以内に議会での承認をえなければならない。
米国議会も韓国と同じく、FTA関連法案の通過に時間をかけたことがある。米国はドミニカ共和国とのFTA締結後、履行法案通過に1年2カ月も要した。
14ヵ月の交渉
FTA交渉を先に申し入れたのは米国だった。2004年5月、外交部と米国貿易代表部(USTR)の通商問題協議の場でのことだった。
それから1年半がたった昨年1月18日、盧武鉉大統領は新年演説で「調整がつきしだい、米国とFTA交渉を始める」と言った。水面下にあったFTA交渉は、国民の関心事に浮上した。
韓国政府の動きは速かった。大統領の新年演説から1週間後、韓米通商の懸案の一つだったスクリーンクオーター(ハリウッド映画の封切り日数調整)縮小と、米国産牛肉の輸入再開を決めた。
同年2月2日には公聴会を強行した。映画関係者や酪農家などの利益団体の激しい反発で、公聴会は荒れた。
しかしこの日、政府は対外経済長官会議を開き、韓米FTA開始を議決。数時間後、米国に飛んだ外交部の金鉉宗通商交渉本部長(長官級)は、米議会でロバート・ポートマンUSTR代表とFTA交渉開始を宣言した。
両国は1次交渉に先立ち、2度の非公式協議を行い、自動車・金融・纎維・投資・サービス・農業・貿易・医薬品など、17の分科を設置することで合意した。
FTA反対の動きも、政府の対応と同じく迅速だった。
3月末、「韓米FTA阻止汎国民運動本部」が発足。組織的な反対運動が始まった。
反対派は、政府が交渉前に推進したスクリーンクオーターの縮小と、米国産牛肉の輸入再開を糾弾し、反対世論を盛り上げた。
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FTA締結に反対する人たち |
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くすぶる反対の声
それから約2カ月後の6月5日、ホワイトハウスの近くにあるUSTR本部で第1次交渉が始まった。初交渉は、両国ともハラの探りあいだった。ソウルで行われた第2次交渉から本格的な交渉が始まった。以後、シアトル、済州、モンタナ、ソウル、ワシントン、ソウルと、計8回の公式交渉が行われた。分科別の交渉も進んだ。
交渉の進展と歩調をあわせるかのように、国内の反対世論も高まった。盧武鉉政権で青瓦台官僚を勤めた人々や、学者らも「反対」を叫んだ。
国内での広報活動が不十分だと判断した政府だったが、FTA締結支援委員会を構成して、反対世論に正面から対抗した。
見えてきた糸口
昨年11月末、韓国に輸入された米国産牛肉から、本来含まれてはならないはずの骨片が見つかった。米国は「骨片は非衛生的環境で生じたものではない」と発表したが、韓国政府は米国産牛肉を返送・廃棄した。
骨片はFTAを決裂させる「ディール・ブレーカー」(交渉決裂要因)になるだろうという悲観的観測が流れた。
緊張していた韓米交渉に、昨年12月から解決の糸口が見えはじめた。纎維・農業・自動車・貿易などの主要懸案を、権限に限界がある実務者ではなく、高位官僚が扱うことにしたからだ。
何としても交渉を妥結させたい両国の思惑が働いたとも言われる。
しかしこの時期、とんでもない突発的事件が起こった。国会に提出した、韓国政府の交渉戦略が盛り込まれた対外秘文書が消えたのだ。
交渉に反対する国会議員が盗んだ、政府が故意に処分したといううわさが広まった。
紆余曲折はあったものの、3月中旬、第八次交渉は終わった。
自動車や農業、纎維以外の分野では、ほとんど合意が成立した。まもなくソウルとワシントンで、纎維と農業分野の高位官僚同士が会談を持つ。
最終交渉
3月26日、FTA妥結に向け、金鉉宗通商交渉本部長と、スーザン・シュワブUSTR代表による「最終交渉」が、ソウルで始まった。
ブッシュ米大統領は29日、クウェートから盧武鉉大統領に電話をかけ、20分以上FTAに関する協議を行った。
米議会の交渉期限である31日午前七時を前に、交渉を2日延長するという発表が出された。
両国のどのメディアも「成功した」とは発表しなかったが、延期は「妥結」を意味するものと見ていい。
韓米が息詰まる交渉を繰り返した14カ月のドラマは、終段階に入ったのである。
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