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2007年1月1日発行版
 
2007年  韓国人は何を願うのか
 
 

 年が明けて新年のあいさつを交わすとき、どうして「おめでとうございます」と言うのだろうか?と、たわいもなく思うことがある。
 たぶん、「1月1日」の歌詞にあるように「終なき世」に感謝してのことなのだろう。生き残った者だけが、世界の無事を願い、手を合わせることのできる謹賀の日だ。イラク、ウイグル、チェチェン、アフガン、ベルファストでも、人びとは上がる初日に頭を垂れ、民族の行く末と暮らしの平穏を祈っただろう。
 日本では、横田滋・早紀江さん夫妻が祈ったであろうことを、何よりもまず思わずにはおれなかった。
 翻って、韓国で、人びとは「終なき世」をどう感じただろうか。
 北朝鮮の核が破裂しなかったことに胸を撫でおろし、38度線がまだ無事であることに安堵しただろうか。それとも、ミサイル発射のたびに、あるいは核実験という花火に快哉を上げただろうか。「金正日の核の傘でむしろ韓国は安泰だ」と思った国民が相当数いたと聞く。金正日の核を祝い、北朝鮮女性と踊りまくった与党大物議員もいた。韓国民は金正日に感謝を捧げたのだろうか。
 2007年の新年。韓国人は何を願ったのだろうか。
 今年は大統領選挙の年。これまでの選挙年とは格段に意味合いを異にする。対北融和政策を第一義におく政権に今後5年も国の将来を託すのかという重大な選挙となる。
 もし、この政権が再々度登場するとなれば、親北15年体制となる。
 解放後、韓国は自由と民主主義をめぐり、独裁政権の弾圧と市民革命を共に経験するという試行錯誤を続けながら国民の価値観を築き上げてきた。人間の解放と人権の謳歌、経済の自由と開放という普遍的思想だ。親北15年体制の下で、その思想は瀕死の床につくだろう。
 「対北融和政策」は単に一つの政治選択で済もうはずはない。世界で孤立する北朝鮮に、韓国独りが助け船を出すことになり、これが決定的な金正日政権の救済策になるだろうが、世界は希代の独裁者の同伴者であり続ける韓国政権に、やはり孤立の道を歩ませるだろうことは火を見るよりも明らかだ。責任は金正日でも盧武鉉でもない。南の有権者だ。
 本来その政権の主人たる有権者国民はどうか。金正日崇拝思想にまみれ、世界の知性からまたも遠のくだろうし、20世紀以来の思想自由、人権、博愛の精神において世界から落伍することは火を見るよりも明らかだ。この知性と思想がかけらもない国が北朝鮮であり、その北朝鮮の指導者を仰ぎ見る政権を再び戴く国民は、世界から落伍するほかあるまい。
 「民族共助」という詐欺的スローガンは捨てるべきだ。古今東西、同族内に不倶戴天の敵を持たない民族はなかった。韓国はむしろ、朝鮮戦争で北と戦い、南侵を38度線でくい止めることで、国民の平穏とより正常な政権を導き出してきたはずだ。だから、北側の独裁権力と北側「同族」の悲惨を目の当たりにして、自らの思想と体制を鍛え直すことができたはずだ。
 「個人の利益よりは家族の利益、家族の利益よりは民族の利益、民族の利益よりは人類の利益」
 命を賭して韓国に亡命した黄長Y氏の言葉だ。
 フランス革命の「人権宣言」は人類の利益をdroit(天賦の権)とした。英語ではrightと訳された。人間固有の精神的能力を問い、また信じた上での「正義」という言葉だ。韓国人は歴代大統領の下で血を流し、苦汗労働に喘ぎもしただろうが、そのつど無抵抗ではなかった。その市民の力が今日のrightという精神の力と社会の秩序を勝ち取った。
 韓国人は今年この精神的能力を再び発揮するのか、死に体となるかの分岐点に立たされる。
 「世界の歴史ですべての大事件は2度現れるとヘーゲルは言ったが、付け加えるべきだ。1度目は悲劇で2度目は喜劇だ」
 ブリュメール18日に対しマルクスの語った言葉が現実味を帯びてくる。金正日体制を望まぬ人びとにとってこの10年の政権はとんだ悲劇であったが、今後5年さらに続くとなればもはや国民的な喜劇となる。


 
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