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2006年12月6日発行版
 
「科協」全貌解明が狙い  総連への家宅捜索
 
北朝鮮と深い関連  他県警も捜査の動き

 「科協」の存在がにわかにクローズアップされている。朝鮮総連の組織「在日本科学技術者協会」だ。北朝鮮の核開発に関わったとして日本の捜査当局がメスを入れようとしている。警視庁公安部は11月27日、薬事法違反容疑で朝鮮総連東京都本部などに家宅捜索を行ったが、この過程で「科協」の問題が浮上した。捜査当局は科協を介して核やミサイル開発に転用可能な日本の技術が北に流出した可能性があると見ているようだ。家宅捜査は直接的には、朝鮮総連系「科協」の幹部を夫に持つ在日朝鮮人女性(74)が「強力ネオミノファーゲンシー」などの医薬品を不法に北朝鮮に持ち込もうとしたことに対して行われたが、今後の捜査は、科協の全貌をどこまで解明されるかに推移していきそうだ。
(政治部・崔世一)=社会欄に関連記事


 「科協」に対しては昨年、警視庁公安部が別の薬事法違反事件で捜索したことがある。この時、北朝鮮の工作機関からの指示を示す科協幹部あての文書を押収しており、軍事技術情報の流出が指摘されていた。長い間、ベールに包まれていた謎の組織「科協」。北朝鮮がらみの不正の構図の中で浮上したこの科学者集団に対し、日本の捜査当局はかねて注視していた。
 05年10月14日、「科協」の幹部2人が警視庁公安部に逮捕され、朝鮮総連関連施設への強制捜査が行われた事件は記憶に新しい。
 科協は、「在日朝鮮人科学者、技術者を網羅した科学技術団体」とされているが、兵器産業をはじめとする北朝鮮の科学技術分野との関連が深い。
 事実、警視庁が過去に摘発した精密機器の不正輸出事件などにも「科協」が関わっており、北朝鮮の日本における「産業スパイ集団」的な役割を果たしているとも考えられている。ニューズウィークは、北朝鮮の核開発に日本から優秀な人材が動員されたと書いた。
 代表的な人物として北朝鮮の「核開発の父」といわれる李升基氏を挙げている。李升基氏は、戦前の京都帝国大学で化学工学を学んだ。
 総連関係者によれば、戦後北朝鮮に帰国した在日朝鮮人科学者は数え切れない。この関係者は「優秀な人材が北朝鮮に流れたのは、日本のせいだ」と言った。
 「日本に彼らの活躍の場はなかった」
 科協関西支部の支部長を務めたことのある歴史家で花園大名誉教授の姜在彦氏の話だ。
 外国人教員制度はなく、大学を出てもいくところがなかった彼らのほとんどは、正規ポストではない研究員として大学に籍を置いていた。後輩たちが講師、教授になっていくと、居づらくなり、祖国への貢献、帰国を夢見るようになったという。「彼らなりに歯を食いしばった。やるせない時代だった」と、元科協関係者は言う。
 果たして、在日朝鮮人科学者たちの活躍の場は北朝鮮にはなかった。
 「原子物理学、バイオテクノロジー、分子生物学。そういうものは北では必要ない」
 姜在彦氏は、京大で原子物理学を学んで北に入った友人から手紙をもらった。
 1952年、北朝鮮に「科学院」が創立されるものの、国内の科学技術の水準が低かったため、外国留学生の技術を活用する術はなかったという。
 代表的な例として、横田めぐみさん拉致の実行犯とされる辛光洙を挙げることができる。
 辛光洙は、ルーマニアのブカレスト工大で機械工学を学んで帰国した工学技術者だった。そんな彼に、北朝鮮は日本潜入工作員という、まるで畑違いの役割を与えた。
 とはいえ、北朝鮮が優秀な人材をまったく活用しなかったわけではない。祖国に戻った優秀な科学者たちが教壇に立ち、その弟子たちがソ連などに留学。やがて国内でも科学者たちが育ちはじめた。
 84年、金日成は中国の開放政策を意識して「合弁法」を制定する。世界各国とも資本や技術協力を強化する北朝鮮の開放政策だった。
 85年には科学技術センターを設立。在日科学者を活用する計画が始まる。
 「科協」の顧問である朱R暾氏は、北朝鮮の科学院創立五50年の式典でこのように語っている。
 「科協は自ら組織的に科学院との連係を深め、86年からは高分子関係の共同研究が進められた」
 この時期から日本の先端技術を北朝鮮に導入するための合弁事業が本格的に始まったと考えられる。
 86年10月には朝鮮国際合弁総会社が設立され、ここに科協の科学者、技術者が多く関与したといわれる。
 現在「科協」会員の多くは国立大や独立行政法人の研究機関、電機メーカーや重機大手など日本を代表する企業に勤めている。優秀な人材ばかりだ。
 だが、中には朝鮮総連の常任理事に名を連ねる人もおり、北朝鮮の指示によるさまざまな不正活動が警察当局の調べで明らかになっている。
 今回の家宅捜索のきっかけとなったのは、在日朝鮮人女性が医薬品を不正に譲り受け、「万景峰号」で北朝鮮に輸出しようとしたことだった。
 入港禁止措置から約5カ月たった同船を舞台にした不正事件捜査は、警察当局が「科協」に切り込むための糸口にすぎなかったと言えそうだ。すでに神奈川県警は、労働者派遣法違反容疑で、科協幹部の会社と自宅の家宅捜索を行った。
 さらに東京、神奈川に続き、他県警も総連に対する捜査の動きを見せており、兵庫県警が早ければ5日、遅くても12日前後には総連本部への家宅捜索に入るもようだ。いずれも狙いは「科協」にあると見られている。

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