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2006年11月1日発行版
 
“対話”は元の木阿弥
 
 
 今は制裁の時であるはずだ。ところが、この期におよんで「北朝鮮と対話すべき」との声がしきりと聞こえてくる。
 先週、国連のアナン事務総長は「米朝対話が必要な時期」と言い、IAEA(国際原子力機関)のエルバラダイ事務局長まで、「北朝鮮を孤立させてはならない」と、記者たちの質問を受けてコメントした。北朝鮮に何度も煮え湯を飲まされてきたエルバラダイ氏の言葉だけに、国際社会は北朝鮮核危機の深刻さを感じさせられた。北朝鮮を孤立させないための努力はこれまで払われてこなかったか。
 1994年には米朝「枠組合意」が成立した。米国はこの時、年間50万トンもの重油の供給を約束することまでした。合意を反故にしたのは北朝鮮である。ブッシュ政権への反発が北朝鮮の態度を硬化させたという一部マスコミの論調は用をなさない。北朝鮮は「米朝合意」のウラで秘密裏に核開発を続行、これが発覚するとIAEAの査察を拒否しNPT(核不拡散条約)からの撤退を宣言した。
 アナン氏の言う「米朝対話」も、米国はぎりぎりの線まで歩み寄り実現させようとしてきた。2000年、金正日総書記は念願かなって米国務長官の訪朝を受けることができた。クリントン政権時の国務長官オルブライト氏は金総書記と会談。マスゲームに心酔し、金正日体制を擁護するまでになった。オルブライト氏はおかげで「歴代国務長官の中で最も無能な人物」と称されるに至ったが、金正日政権は米国をも手玉に取ったつもりであったのだろう。核実験は「対話」路線の賜であったと言っていい。にもかかわらず何故、再び「対話」なのか? 本末転倒と言うべきか、元の木阿弥と言うべきか。
 国際社会が北朝鮮の暴発をおそれているということはたしかにある。だが、暴発の根を絶たないかぎり問題は堂々巡りとなり、金正日政権による瀬戸際外交の術中にまたしても嵌ることになろう。暴発の根は金正日政権自身にある。自らの体制保障を米国に求めて核カードを切ったのを見てもそれは分かる。核放棄と金正日政権存続の問題をもはや分けて考えることはできないだろう。米国流に言えば、「金正日に祝福を与えることはない」ということになる。
 暴発は、国連加盟国の北包囲網が整えば起こりえない。金正日氏は延命の道を探るほかなくなるからだ。問題はやはり、中国と韓国だ。自分たちの圧力なしで北朝鮮への制裁が成り立たないことを承知している2国がなぜ対話を提唱するのか。北朝鮮に核放棄を迫りながらも金正日政権の根を残したいとする底意が透けて見えてくる。
 中国の劉建超外務報道局長は「朝鮮半島の核問題を解決する最良の道は6カ国協議でしかない」と言い切った。韓国政府も同様のコメントを出している。中国は6カ国協議に北朝鮮を復帰させるためには、米国の対北金融制裁を「迅速に解決すべき」との見解を示し、制裁への参加を表明する傍ら、米朝直接会談をさかんに促している。
 朝鮮半島の非核化を協議するための6カ国協議は、北朝鮮が核保有を宣言した後では成立しようもない。言い換えれば、6カ国協議自体、対話の場であり続けたし、北朝鮮に対する執行猶予の場であった。その執行猶予を取り消したのが安保理決議である。この意味を取り違えないかぎりにおいて、6カ国協議の再開はあり得よう。だが、米国、日本が言うように、それは北朝鮮の無条件復帰であるべきだ。ヒル米国務次官補の言うように「北朝鮮の核クラブ入りは絶対に受け入れない」ことなのだ。再対話は北朝鮮がかつての南アのように保有した核を全面廃棄(93年)し、それを国際社会が確認可能な形となってはじめてなされるべきものだ。
 対話を拒否する米国と、対話を促す中国、韓国の差は、金正日政権の存続を望むか否かのちがいとして顕れており、この差は決定的に大きいと本紙は考える。世界のマスコミはおおむね北包囲網が整いつつあると報じている。であればよいと思うが、大山鳴動して鼠一匹出ず…とならないことを願うばかりだ。


 
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