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民団はとりあえず出直すきっかけは得られた。臨時大会は混乱なく終えることができた。
河丙ト団長は不信任決議が出される前に辞任し、団長選への不出馬を誓約した。再出馬を表明していれば、対立は底なし沼にはまり、人心の荒廃は回復不能なまでに広まっただろうし、一般団員こそが最もダメージを被ったにちがいない。河丙ト団長は不信任決議のもたらす自らへの不利益を考えたのであろうが、結果として団員に民団再生への希望を残したことになる。引き際を考慮したことを歓迎したい。
9月21日の臨時大会はどうであったか。
鄭進候補は出席代議員、中央委員501名(在籍総数529)の6割強にあたる318票を得た。圧勝であった。だが、鄭進新団長は楽観してはおれまい。得票は必ずしも支持票とは言えないからだ。
得票は必ずしも 支持票でない
選挙レースは当初、接戦になると予想された。他の候補が金洪斤候補と手を組んでいれば、勝敗はどうなっていたか。少なくとも圧勝とはゆかなかったはずだ。票の流れは、金洪斤氏が河丙ト前団長路線を継承するだろうと見られたため、これに対して否定的に作用した。ようするに、鄭進支持というより、金洪斤否定票が鄭進団長を生んだと言っていい。
河丙ト体制への拒否反応は金洪斤陣営が思った以上に強かったと言えるのだが、それだけに鄭進体制が背負わされた荷は重い。
前回の選挙で河丙ト氏は「改革民団」「在日の和解による和合」の実現を公約に掲げて当選した。敗れたのは鄭進氏だった。河丙ト氏の執行部は実際上、朝鮮総連との「和合」にやみくもに突き進んだだけだ。これが団員たちの目に「野合」と映った。鄭進氏にとって今回当選した意味よりも、前回敗れた意味のほうが大きい。河丙ト氏は金大中前大統領の太陽政策、それを引き継いだ盧武鉉政権の「南北共助」政策の後押しで日本版「連邦制」の実現を目指したのは明らかだ。つまり本国政権の追い風を受けた。鄭進氏にとってはそれが激しい向かい風となる。この向かい風に本来の民団精神を貫き通すことができるのか。
思いの外大きい 5・17の打撃
また、5・17事態の危機を民団はすんでのところで乗り切ったが、5・17事態によって在日韓国社会が受けた打撃は思いの外甚大である。日本社会が民団・総連を同一視し始めているからだ。この責任は一に河丙ト前執行部にあるだけではない。拉致問題しかり、本国政権の北朝鮮政策に対してしかり。河丙ト執行部が登場するまで、民団は積極的にこれらの問題に対して対応策を示すことができなかった。このことが河丙ト氏と、その背後で蠢く親北派の跳梁を許したと総括すべきだ。
韓日国交正常化から40年もの間、営々と築いてきた韓日関係は、とりもなおさず日本社会における在日韓国人の地位向上と潤滑な経済活動をも保障してきた。それが一夜にして無に帰してしまうような状況が生まれているのである。公権力、金融、地域社会が一体となって在日韓国人を白眼視していくだろう。
鄭進新執行部は非常な決意で危機的状況を見据えねばならない。在日韓国社会の浮沈が、自らの肩にかかっているという自覚が必要なのだ。普遍的な民主主義と市場経済という日本との共通の価値観を確立する、いわば民間外交の道を早急に建て直さなければならない。道は険しいだろう。だが、それなくして在日韓国社会の再構築への道はない。
本来、在日韓国社会の権益擁護団体であるはずの民団であるが、否が応でも、本国の政治に対し、是々非々で臨むことが迫られている。ようするに本国から自立し、日本社会での信用を取り戻せと、民団員は今度の選挙で新団長を選んだのである。
圧勝に奢るべからず。
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