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2006年9月6日発行版
 
米国外しを狙った軍事衛星
 
 

 韓国初の軍事衛星「ムグンファ5号」の打ち上げは成功した。成果はまだわかっていないが、政府内部からは「米国ぬきでの単独作戦が可能になった」という声が漏れ聞こえる。
 軍事衛星の打ち上げは、米韓合同による「戦時作戦統制権」を韓国軍へ移譲させようとする現下の問題と大きく関わっているのだろう。
 統制権移譲の問題が公然と語られたのは今年1月だ。盧武鉉大統領は年頭記者会見で、統制権を韓米連合体制から韓国軍に移譲するよう求めていることを明らかにした。南北間の紛争で米軍が前面に出ないほうがよいというのが理由だった。
 米国はそんな韓国政府にたいし実に冷ややかだ。8月中頃、ラムズフェルド国防長官は「OK、韓国に移譲しようではないか」と、あっさりと言った。「困るのは韓国軍だ」という底意が見える。韓国軍への移譲で米国は偵察衛星情報を韓国側に提供する義務がなくなるからだ。


「困るのは韓国軍」

 米国の偵察衛星は地球上のあらゆる国の姿を丸裸にしているといわれる。たとえば、中国「中南海」の要人たちの散策する姿がはるか宇宙空間から捕捉され、かれらの健康状態までたちどころに分析されてしまうほどだという。衛星搭載のイメージセンサーから送られてくる画像が、ワシントンDC連邦ビル内の「国家写真解説センター」で3次元画像への転換も可能な精巧なコンピューターシステムによって解析処理されているのである。
 だが、困るのは米国側にも言える。実を言えば、米国をして諜報戦で最も手こずらせているのは北朝鮮であると、当局者たちは非公式に認めている。
 米国をして対北朝鮮情報の不足を感じせしめているのは人的情報(humanintelligence)だ。「敵と同盟国の意図を把握する力は、人的情報をどれだけ収集できるかにかかっている」とCIA、DIAをして言わしめたほどだ。「情報は人だ」という諜報世界の格言がコンピューター時代にまだ生きているということだ。つまり機械では敵の感受性や喜怒哀楽が推し量れず、かれらの突飛な思考や行動までははじき出せないのである。敵の血と肉が見えないということだ。
 米国はイラクですでに人的情報の収集にしくじり、今日の泥沼化の事態をもたらしている。スンニ派・シーア派の感情の底までは読めなかったのだ。
 北朝鮮情報でいうならば、人的情報は亡命者(脱北者)たちということになる。言い換えれば、米国にすれば統制権移譲でこの人的情報が隠されることになる。つまり敵と同盟国(韓国・北朝鮮)の意図を把握できなくなるのである。
 逆に言えば、「米国ぬきでの単独作戦が可能になった」という韓国政府の意図はどこにあるのか。「北朝鮮との連携作戦が可能になった」という意図とも受け取れるのである。


「敵」とは誰を指すのか

 韓国合同参謀本部はムグンファ5号に「敵の電波妨害に対応する電子戦機能」が備わっている点を強調している。この際の「敵」とは誰を指すのか。米国はこの点にまで疑いを入れていると言う。
 韓国の軍事衛星とは格段に性能を異にする米偵察衛星。韓国はにもかかわらず、独自の軍事衛星を保有した。軍事衛星の能力を恃たのむというより、統制権移譲の裏付けを得たかったかのようだ。ウォールストリート・ジャーナルは、盧武鉉大統領の年頭記者会見の言葉をうけて、「米政府は盧武鉉の背後にはっきりと金正日の姿を捉えている」と書いた。
 金正日の韓国政府に託す最大の願いは「在韓米軍撤退」である。盧武鉉政権のムグンファ5号打ち上げは、統制権移譲→在韓米軍削減→在韓米軍撤収を射程に入れたものと、少なくとも米側にうけとめられているということだ。
 米国はすでに世界戦略上の軍事シフトをアジア、中東に転換しており、西太平洋の軍備再編として、陸軍第一軍団司令部をワシントン州から座間に移した。
 在韓米軍の移転計画もこれにリンクしているという話もある。連合司令部解体の危機どころではない韓国安保の危うさがある。


 
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