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2006年8月2日発行版
 
ヒズボラの力とアメリカの思惑
 
 

 レバノン情勢が世界の耳目を集めている。ヒズボラ・イスラエルの戦闘が、地域全体の不安定化をつくりだし、地域紛争の枠を飛び越える可能性を見せはじめているからだ。イスラエルの有力紙『マーリブ』は7月28日、「第1次イスラエル・イラン戦争」という見出しの記事を載せた。
 それにしてもなぜこの時期に紛争が勃発したのか。韓国、日本のマスコミは十分には触れていない。ただ、イランが核開発問題を国外にそらすために仕組んだという米国側の認識を引いているだけだ。
 発端は7月12日、ヒズボラがイスラエルに越境攻撃し、イスラエル兵2名を拉致したことにある。それは事実だろう。だが、ヒズボラ指導者ナスララ師は「捕虜にした」と発言している。レバノン側からすれば、イスラエルとはまだ準戦時状態なのだという認識を私たちは持っておいたほうがいいだろう。
 中東各紙は、米国・イランの「代理戦争」とは見ていない。ヒズボラが自らの抵抗体としての存在感を示すため独自の行動に出たという見方である。ヒズボラの目には、武力攻撃と経済封鎖で窮地に立つパレスチナ・ハマスの姿があり、イラン封じ込めを狙う米国の姿があるはずだ。こうした情勢でヒズボラが存在を示す必要があったとしてもおかしくはない。実は、3年前、ヒズボラとハマスは会合を持ち、シーア・スンニの宗派を超えた連携を確認し合っている。それほど中東イスラム社会は逼塞状況にある。「代理戦争論」は米国の見方でしかない。
 フランスの『リベラシヨン』は、ヒズボラはレバノンの連立内閣に参加しており、2000年の選挙では12議席を確保するほど、国内で支持されている合法組織だという点を紹介しながら、そのような組織を単に過激派テロ集団と片づけてよいのか?と疑問を投げた。ヒズボラの政治活動が、レバノンの教育、医療、福祉の水準を引き上げているのは事実である。今回の事態を、イスラエル一国と過激派テロ組織の戦闘と呼ぶ私たちの見方では、ヒズボラの実情は把握しきれないということだ。
 一方、米国はこれまで停戦には慎重な姿勢を見せてきた。ヒズボラの背後にイランがあるとの認識から、イスラエルの手でヒズボラの軍事力を無力化しようとの思惑が働いたからだ。
 その米国がライス国務長官を中東に派遣し、停戦への仲介に乗り出した。ヒズボラの軍事力を無力化するには、中短期的に無理があると判断したためだろう。ヒズボラの放ったロケット弾が28日、イスラエル第3の都市ハイファを直撃した。イスラエルと米国は強い衝撃をうけたはずだ。米国は1983年、ベイルート基地をヒズボラの攻撃で爆破され2百人以上の犠牲者を出し同基地を引き払っている。イスラエルも2000年5月、ヒズボラとの激戦の末、占領地のレバノン南部から撤退を余儀なくされた。ようするに、ヒズボラはこれまでも侮れない相手であったといえる。
 イスラエル側は30日現在、すでに市民18人を含む51人の犠牲者を出している。イスラエルは力ずくで押さえこむことへの焦りをおぼえている。
 ライス長官は、7月30日、イスラエル、ヒズボラ双方に戦闘を収拾するよう呼びかけた。早ければ8月1日にも、協議される国連安保理の決議に、停戦にむけた条件付きの合意案を盛り込むもようだ。だが、ヒズボラは米国の仲介を拒絶している。一つには米国を中心とする国連安保理への根強い不信がある。イスラエル軍のパレスチナ占領地域からの撤退をうたった国連安保理決議242が米国によって無視され、今日の出口なき中東情勢をつくりだす一因となったことが背景にある。
 米国の中東政策には公明正大さが望まれよう。その点が損なわれれば、アジア情勢にも大きな影響を及ぼすだろう。現に、北朝鮮の先のミサイル発射の際にはイランの核開発技術者が立ち会っている。公正さを欠けば北朝鮮に“居直り”の口実を与えかねない。おなじく「悪の枢軸」と呼びながら、北朝鮮とイランでは微妙に対応を変える米国。その姿勢が中東地域の不安定要素を世界へと広げるかもしれない。米国自身にそうした危険性があることを指摘しておきたい。


 
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