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2006年7月5日発行版
 
聞け!横田夫妻の叫び
 
 

 崔桂月さんと金英子さんは、6月28日、南北離散家族再会事業が行われている北朝鮮・金剛山で金英男さんと28年ぶりの再会をはたした。
 韓国のメディアは「涙の再会」と報じた。日本の報道はこれとは対照的だ。おおむね、北朝鮮のシナリオどおりの再会劇が演出されたという内容である。
「めぐみは94年に自殺した」「拉致されたのではなく北朝鮮の船に救助された」
 などという金英男さんの発言は、想像できたことだ。
 日本の「家族会」は、金英男さんにしても北朝鮮では本当のことを言えず、気持ちを表すことができないことを理解すべきだと述べている。ジェンキンスさんは2004年5月、小泉首相の説得を受けたとき、本心を言えなかった。蓮池薫さんたちも、しばらくは北朝鮮の立場を捨てられなかった。もし、彼らが今回の金英男さんの立場と入れ替わったらどのような様子を見せたか、おおよそ、これも想像がつくことだ。
 それにしてもである。北朝鮮の仕組まれた再会劇だとはわかっていても、あの金剛山での再会シーンになぜこうも違和感を覚えるのだろうか。韓国メディアが「涙の再会」と報じるような感動は、少なくとも日本人にはなかっただろうし、本紙もそのような受け止め方はできそうもない。
 あまりに予想したとおりの金英男さんの会見内容であったからなのだが、それ以上に、彼の言葉、口ぶり、表情がぞっとするほど北朝鮮そのものであったからである。ほんのわずかにでも拉致被害としての表情を見せはしまいかと思ったが、その期待も泡と消えた。
 金英男さんは、母・崔桂月さんと何度も熱い抱擁を交わし、再婚したという女性と子供を記者団に紹介した。その傍らでヘギョンさんが、ほんのついでのように紹介された。ぽつんとたたずむヘギョンさんの表情と、それをみて「かわいそうに」とつぶやく横田早紀江さんの表情が印象的だった。
 一方で「めぐみは自殺した」と金英男さんは無表情に語った。自殺はうつ病のせいで、原因は脳障害だったと説明した。これを聞いてめぐみさんの父と母がどれほど傷つくか、金英男さんは何も考えなかったのであろうか。それとも、これも北朝鮮当局に言わされたことだから仕方ないことであったのだろうか。
 それにしては、金英男さんの態度はあまりに落ち着き払っていて、語り口も淀みがなさすぎるほどであった。
 蓮池さん、地村さんたちの最初の記者会見とはまるでちがった。北朝鮮に踊らされたと見るのは、半分は当たっているだろうが、半分は疑問をつけたい。
 金剛山でくりひろげられた再会劇は仕組まれものであろうが、横田夫妻にとっては想像していた以上に残酷なシーンとなった。夫妻はおそらく深く傷ついただろう。夫妻を傷つけたのは、金正日と盧武鉉である。だが、金英男さん家族も、残酷な行為に一役買ったと本紙は言っておきたい。
 早紀江さんは、崔桂月さんと金英子さんに、「北朝鮮には行かないでほしい」と再三うったえていた。あなたたちだけの問題ではないのですよという早紀江さんの心の声であった。崔桂月さんたちは、この声を聞き捨てたことになる。
 金英子さんは「肉親の情は何よりも深い」と言った。まるで横田夫妻にめぐみさんへの情がないかのような言葉に聞こえた。夫妻は、ヘギョンさんに会わせようとする北朝鮮の誘いを峻拒した。どれほど辛かったであろう。それでも、夫妻は拉致被害者全体の問題を追求しつづけた。このたたかいが、北朝鮮をおいつめ、「韓国人拉致被害者・金英男」の存在を明るみに出した。そのことを崔桂月さんと金英子さんは忘れてはなるまい。
 早紀江さんは28日、テレビのインタビューに、「親子の対面という意味では、当たり前のことで、よかったと思います」と答えていた。崔桂月さんたち肉親の情を否定すべくもないが、横田夫妻には苦言を呈する資格はある。
 韓国、日本の拉致問題への取り組みの違いは、拉致被害者家族の人格の違いを見せていると言ってもいい。横田さんの心の叫びを韓国人は聞く必要がある。


 
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